個人景況感が大幅悪化 アベノミクス前に逆戻り…賃上げが改善のカギ

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 日銀が8日に「生活意識に関するアンケート調査」の結果を発表した。2014年11月7日から12月4日までの4週間にわたって全国の20歳以上の個人4000人を対象に行われたものだ。企業の景況感を示す「企業短期経済観測調査(短観)」と対照的に、今回の調査では個人の景況感が示される。

 今回の調査結果によって、個人の景況感が、安倍晋三氏が2年前にアベノミクスを始動させる前のレベルに悪化していることが示されており、アベノミクスを推し進める安倍首相の課題を浮き彫りにしていると、フィナンシャル・タイムズやウォールストリート・ジャーナル、ロイターが指摘している。

◆景気の好循環を生み出す新フェーズへ
 フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の調査では、個人の景況を示す指標のほとんどで悲観的な見方が楽観的な見方を上回っていると述べている。

 その後に、安倍氏の側近の、アベノミクスの最初の2年間は、企業が十分な自信を取り戻し、賃金を引き上げ、消費を伸ばすという好循環を生み出す新フェーズのための地ならしであったという言葉を引用。これを支援するために、政府が来年度に法人税の税率を引き下げることで、企業側に賃金の引き上げを求めていることを述べた。

 しかしながら、2.9%の人が経済は現在のレベルよりも成長する可能性があると答えているものの、アベノミクスが始まって以来の最悪の数字であることを伝えている。

 安倍氏の年始の挨拶での「しっかり経済を立て直し、強い経済を取り戻し、世界に貢献する日本として復活することができるのではないか」という言葉が、今後とも注目される。

◆構造改革で経済成長へ
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、悲観的なムードが趨勢を強めてきていることを伝えている。

 まず、51.1%が「ゆとりがなくなってきた」と答え、「ゆとりが出てきた」と答えた4%との差が約47%となっているのは、安倍政権が発足した2011年12月以来で最悪のレベルになっていることを伝えた。この結果が、より多くの人にアベノミクス政策の恩恵を感じてもらいたいと述べる安倍首相への課題を指し示すものだとしている。

 また、38%近くの人が1年後の景気は悪くなると思うと答え、さらに半数以上の人が将来の成長は今よりも低いと思うと答えていることを伝えた。

 同紙は、安倍氏が、医療・福祉や農業などの分野での構造改革によって国の成長への潜在力を高めると述べているものの、まだまだ大きな課題があることを示唆した。

◆円安と消費税増税が家計を圧迫
 ロイターも同じように、安倍首相が直面する課題が浮き彫りになったことを指摘している。

 安倍氏によって打ち出された、デフレからの脱却を目指す大胆な経済政策であるアベノミクスは、円安を進め株価を上昇させたものの、企業の賃上げなどは進んでいないことを指摘。

 一方で、景気が悪くなったと答えた人の多くが、物価の上昇と上がらない給料に不満を感じており、さらに4月の消費税増税と円安による輸入コストの上昇で家計が圧迫されていることを指摘した。

 また、日銀が2%のインフレ目標達成のために大幅な金融緩和を行っているものの、83.8%の人が物価の上昇を望んでおらず、しかも、そう感じる人は前回の9月の調査での78.8%から増加していることを伝えた。

Text by NewSphere 編集部