アベノミクス失敗すれば2016年に政権交代あり得る? 米誌指摘

 日本の4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は、6.8%減(年率換算)となった。マイナス成長は昨年10〜12月期以来だが、4月の消費増税前の駆け込み需要の反動と見られている。主な海外経済メディアの分析も、実際の日本経済は数字ほどには悪くないという論調が多い。しかし、アベノミクスが掲げる日本社会の構造改革は遅々として進んでいないという見方もあり、先行きが明るいわけでもなさそうだ。

【駆け込み需要の一時的な影響】
 『なぜGDPが急落した日本は数字ほどには悪く見えないのか』(ブルームバーグ)、『悲観的な数字にも関わらず、日本経済にはまだ回復力がある』(フィナンシャル・タイムズ紙=FT)― 6.8%減という数字を受けた海外各紙の解説記事の見出しは、大筋で「緩やかな回復基調が続いている。4〜6月の増税後の落ち込みは反動減の範囲内だ」(甘利経済財政・再生相)とする政府見解に沿っている。

 ブルームバーグは、「4〜6月期がひどい結果になるのは、誰もが予想していたことだ」と駆け込み需要の影響を強調。前回(1997年)の消費税増税時よりは悪影響が少ないとしている。同メディアが行った37人のエコノミストへのアンケート調査では、予想値は7%減だったといい、それよりも減少幅が少なかったことも強調している。

 ノムラ・インターナショナル香港のエコノミスト、マイケル・クルツ氏は、ブルームバーグの記事中で「日本経済は十分な勢いをつけて増税に入った」と評価。企業収入もよく持ちこたえており、「多くの投資家が恐れたよりも、はるかにネガティブな影響は少なかった」と述べている。FTのオピニオン記事も、1〜3月期の大幅増(5.9%)を「単に帳消しにするものだ」という見方を示し、アベノミクスによる「ゆっくりとした成長」に、特に影響を及ぼすものではないとしている。

【消費増税は景気浮揚に不可欠な要素だが・・・】
 消費増税について、FTは「日銀はようやく経済をインフレ化させる決断をした。同時に、世界でも例外的に低い消費税率は改めなければならないものだった」としている。同紙は、日本がほとんどの先進国よりも低い税率を保ってきたのは、「ひとえに政治的なリスクを避けるためだった」と指摘する。その中で、安倍政権は高い支持率を背景に増税の千載一遇のチャンスを活かしたとし、「つまりそれは政府が経済再生に積極的だということだ」と論じている。

 FTはまた、日本経済再生には財政赤字の削減が不可欠で、そのためには「成長に結びつく税制と消費活動の両立」が必要だと訴える。消費増税はその一連の政策の一部だという捉え方だ。また、短期的に有効な景気刺激策として一時的な所得税減税を提案している。

 米『フォーリン・ポリシー』誌は、現在の世界経済を俯瞰する記事の中で、安倍政権誕生以降の「政治的なシフト」が日本の経済政策をドラマチックに変えるかもしれない、としている。日銀はアメリカ、ユーロ圏、イギリスの中央銀行に比べて政策決定力に欠けるが、強いリーダーシップを持つ安倍政権ならば政治主導で思い切った経済改革も可能だという指摘だ。

【構造改革は「何も進んでいない」】
 一方、アベノミクスは「第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)」の核となる提唱する日本社会の構造改革を実行する段階に入っている。これについて、独立系リサーチ会社、ジャパンマクロアドバイザーズの大久保琢史チーフエコノミストは「主な改革は何も進んでいないと思う」と悲観的だ。

 同氏はブルームバーグテレビの取材に答え、安倍政権が掲げる女性の労働機会の拡大などの構造改革について「それらの政策を支える予算が見えてこない。何のアクションも起こしていないとしか言いようがない」と切り捨てている。

 ノムラ・インターナショナル香港のクルツ氏も「安倍首相が難しい構造改革を押し進めるためには、もっと時間が必要だ」と同様の見方を示す。安倍政権誕生後、投資家たちは素早い構造改革の実行を期待していたが、それはもはや「非現実的だ」と言う。同氏は安倍首相が自民党内で政策実行のコンセンサスを得るのに苦労しているのが原因だと見ている。これについて、『フォーリン・ポリシー』は、2016年の総選挙までに目立った成果が見られなければ、再び政権交代もあり得ると記している。

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Text by NewSphere 編集部