日本の貿易赤字、過去最大 原発再稼働で緩和の見込みも、輸出回復には懸念 海外紙指摘

 6月の貿易収支(原数値)は、集計を始めた1979年以来、6月としては最大の8220億円となった(財務省24日発表)。24ヶ月連続の赤字だ。半期ベースでは7兆5984億円の赤字でこちらも過去最大。

 輸入額は8.4%(前年同月比)上昇し6兆7619億円、輸出額は2%下がり5兆9396億円であった。

【円安が進んでも輸出は伸びず】
 アベノミクスに対し、再び疑問の声が上がっている、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。約2年間回復傾向にあった経済に、貿易赤字がどんな影響を与えるか、安倍晋三首相にとって頭の痛い問題だろう、とみている。円安は進んでも輸出は伸びていない、と海外各紙は指摘している。

 日本はこれまで、輸出大国という座に安堵していた。過去には、円安が日本車、電化製品、その他の商品の海外での競争力を押し上げることで日本国内の経済を活性化させた。しかし、今回は、その効果があまり見られない。原材料などの輸入額が手痛い上昇をし、国内の事業に打撃を与えている。

 アベノミクスによる当座の活況で国内消費が回復していることで、企業と政府は輸出の弱さを相殺しようとしている。しかし、経済は今、4月の消費税増税の影響を振り払おうともがいており、貿易の失策はより大きな負担となって現れだろう、とフィナンシャル・タイムズ紙は予想している。

【原発停止が赤字増加の要因】
 貿易赤字が続いている大きな理由は、2011年の福島第一原子力発電所事故後、原発が操業を停止していることだ、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。震災の被害を受けなかった原発も全て停止したままだ。安全性についての議論が過熱する中、そのため、何兆円もの石油とガスをこれまで以上に輸入しなければならなくなっている。

 また専門家は、韓国などに比べ日本ブランドの家電製品が訴求力を失っていることや、日本製工作機器の大口の顧客である中国企業の設備投資の動きが鈍くなっていることなどを挙げている。

 ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦氏は、「輸出停滞の問題は、深刻さを増している」と懸念している。「貿易バランスの赤字は長期間続くと予想している」(フィナンシャル・タイムズ紙)

【赤字幅は危険要素ではない】
 日本企業は現在、多くの生産拠点を国外に置いている。これは、海外での販売で利益を上げることに役立っている、とフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。実際、トヨタなどは最近、記録的な利益を報告している。

 またウォール・ストリート・ジャーナル紙では、複数のエコノミストが貿易赤字について、心配するような数字ではないとしている。

 キャピタル・エコノミクスのマーセル・シリアント氏は、楽観的な見方ができる余裕がまだあるとしている。6月の季節調整していない貿易赤字は、1月の2.8兆円から8222億円に狭まっていることを挙げた。また、輸出は伸びていて、この数字が今後さらに小さくなるだろうと予想している。加えて、エネルギー資源の価格は世界的に下落傾向にあり、日本国内の原発も再稼働する予定のため、輸入額も減少するだろうと予想している(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

 同氏は、日本が純輸入国になり、負債を補うためにより多くの海外投資家に国債購入を依存する危険性も否定した。個人と企業の貯蓄は十分で、日本国債はその多くを国内の債権者が保有し続けるだろうとみている。 

【輸出が増加しなくても利益確保の大企業】
 みずほ証券の末広徹氏は、「日本は、輸出回復で他国に遅れを取っている。リーマンショック以降の円安で海外に生産拠点を移す動きが加速したことが主な要因だ」と分析した(ブルームバーグ)。

 同氏は、生産拠点の海外流出の影響がアメリカの自動車市場で顕著だ、としている。米自動車関連調査機関『オートデータ』によると、日本自動車企業のアメリカでの売上は、2014年6月までの半年で6.2%上昇し、304万台となった。これに対し、日本からアメリカへの輸出は、同時期8.5%減少している。

 ホンダは2013年、アメリカからの輸出が日本からの輸出を上回った。ホンダもトヨタも北米工場での生産台数が最高を記録している。日本自動車工業会によると、日本からアメリカへの自動車の輸出は、2008年から17%減少している。

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Text by NewSphere 編集部