日本、23ヶ月連続貿易赤字 “輸出は回復する”との黒田総裁の強気発言を海外報道

 18日、財務省は5月の貿易統計速報(通関ベース)を発表した。これによると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は9089億円の赤字だった。

 赤字は23カ月連続だが、5月は輸入が19ヵ月ぶりに減少に転じ(3.6%減)、前年同月と比べた収支は2カ月連続で改善した。しかし、輸出額も2.7%減り、15カ月ぶりに前年同月を下回った。

【アメリカやアジアの景気回復が鈍化】
 各メディアは、アメリカ向けの輸出が2.8%減少、中国を含むアジア全体向けの輸出が3.4%減少したと述べる。また、中国向けの輸出は0.4%増えてはいるものの、1年強の間で最低の増加率にとどまったと報じている。

 ロイターによれば、シンガポールの対米輸出も4月には11.7%伸びていたものが、5月には8.8%減少しており、韓国の対米輸出も4月の19.3%増から、5月は5.5%増に減少したという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、国際通貨基金(IMF)が16日、2014年のアメリカの経済成長率見通しを、4月時点の2.8%から、2.0%へと下方修正したことを挙げる。同紙はまた、欧州中央銀行(ECB)が5日、中銀預金金利を初めてマイナス0.10%に引き下げたと述べ、世界的に景気回復は停滞気味であるとする。

【日銀の見方】
 日銀の見方はどうだろうか。ロイターは、13日の黒田総裁の会見から引用している。

「輸出の回復時点が少し後ずれした可能性はあるが、輸出が全体として回復しないというようにはみていない」

 日銀では、4月に行われた5%から8%への消費税率引き上げのインパクトを、輸出の増加が部分的に相殺すると見ていたが、5月の財務省貿易統計からはその動きは確認できなかったと、ロイターは見る。

【今年度、貿易赤字は減少するか?】
 ロイターは、アメリカの独立系マクロ経済調査会社『キャピタル・エコノミクス』による見方を以下のように伝える。

「ドル安のために、輸出を増やすのが難しい今日、アベノミクスがあてにできるのは、市場シェア獲得による輸出増加ぐらいだろう。外需の弱さを十分相殺できるぐらいの内需刺激策が打てるかどうかが依然として問題だと思われる」

 同紙は農林中金総合研究所の南主席研究員の見方を紹介している。南氏によれば、日銀による追加緩和策への期待は今年後半以降へと大きく先延ばしにされてきたが、秋には黒田総裁も勢いが無くならないよう動くだろう、という。

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Text by NewSphere 編集部