日米TPP交渉に“進展なし”と海外紙予想 オバマ来日も期待薄

 オバマ米大統領が日、韓、マレーシア、フィリピン歴訪をスタートさせた。日本では停滞しつつあるTPP交渉の進展如何などが注目されているが、海外各紙の期待は高くないようだ。

【どちらもポイントの稼ぎ時だが・・・】
 オバマ大統領にも安倍首相にも、TPP交渉は勝負どころだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、オバマ政権のアジア重視戦略が地域諸国から眉唾に見られる中、貿易関係の強化は、中国と必要以上の摩擦を起こさずにアメリカのプレゼンスを強化できる最善策だろうと指摘している。

 例えば今回、アメリカはフィリピン軍事基地の利用拡大に漕ぎ着けると見られているが、これは中国と真っ向から対立してしまう方向だ。しかし「ロシアと中国、両方に同時に強気に出られる余裕はない」中、たとえ武力攻撃に対しては同盟国を守る条約があっても、領土紛争にうかつに肩入れはできず、そのままではアメリカの威信に関わる。さらに今回のアジア歴訪自体、予算問題でキャンセルに追い込まれたものの穴埋めという、格好悪さがあるのだ。

 安倍首相についても、TPPは「地球全体の利益になる、単一の巨大な成長エンジン」を生み出すものだと述べ、「私は何があってもこの未来を実現するつもりです」と宣言していると、フィナンシャル・タイムズ紙は報じている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、合意に達することができなければ、日本経済復活の公約のため厳しい選択もする、という積極姿勢に疑問符がつくと評した。

【予備交渉成果なし、あとはぶっつけ本番のみ】
 しかし日本側は牛肉、乳製品、豚肉、砂糖、米の5「聖域」を含む農産品関税を、アメリカ側は自動車関税を、断固守ろうとしている。日本でアメリカ車が多く売れれば日本車の輸入関税を下げるという案もあるようだ。

 フィナンシャル紙は、大統領訪日に先駆けて数週間の予備交渉が重ねられ、フロマン米通商代表と甘利経財相も「過去2週間、東京とワシントンで40時間ほどの交渉を持ち、その半分は1対1の議論であった」が、交渉は暗礁に乗り上げたと報じる。ウォール紙も、日米とも大統領訪問中に「画期的な日米貿易協定合意を発表することによって、日米同盟の強さを誇示したいと願っていた」が、「24日の首脳会談直前に突破口が開かれる公算は今やほとんどなくなった」とバッサリだ。

【与党内からも抵抗、もはや最後のチャンス?】
 両紙によれば、経団連と米国商工会議所が共同でTPP推進を訴える一方、日本は自民党内からも農業保護の訴えが強く、また安全保障上の懸念から食糧輸入拡大に慎重な意見もある。米政権も、交渉上のカードにもなると目される「ファーストトラック(議会の修正案を認めない)」権限が、有力民主党員に阻止される事態となっている。

 「またフィナンシャル紙は、マレーシアやチリなどでも反対が強まり、新政権がTPPに待ったをかけつつあると指摘している。来年に入ればアメリカが大統領選モードに突入することもあり、今進展がなければこの先はもっと不透明だとの懸念があるという。

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Text by NewSphere 編集部