原発停止のせいだけではない 過去最悪の貿易赤字、その実態

 12月のコア消費者物価が日銀の2%目標に対して1.3%まで到達するなど、政府が31日に発表した経済データは好材料が多かった。にもかかわらず、政府は2020年までに均衡財政を実現する公約を達成困難と認めた。貿易赤字も大幅拡大していた。

【緩和路線を止めたい財務省】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、先週の政府予測によれば、毎年3%の名目成長率と0.5%の歳出削減が実現できても、2020年度時点でなお6.6兆円のプライマリー赤字(債務返済や債券発行を除いた収支差)が残ることがわかったと報じた。来年度の予算案では、税収50兆円および別途積立金5兆円に対し、支出は73兆円で、プライマリー赤字18兆円となっている。

 予測は、2015年10月に予定される2段階目の消費税増税(10%)も実行する前提である。同紙は、法人税引き下げなどハト派(緩和)財政路線をとる安倍政権と、タカ派(緊縮)路線を望む財務省との対立が、この結果を受けて強まると予想している。予測の発表タイミングも、アナリストらによれば、法人税制改革の議論が今月始まるのを財務省が見計らったのではないかという。

 日本の長期債務はすでに税収の約16年分に相当し、危険な水準にあるとされる。

【金融危機をいまだに引きずる貿易赤字】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、昨年の貿易赤字が11.5兆円で3年連続の赤字、かつ2012年の6.9兆円よりも大幅悪化したと報じた。輸出は2012年から9%増加したが、それでも2008年より17%低く、主要輸出国で金融危機前のレベルまで回復していないのは日本だけだと強調されている。

 円安にもかかわらず貿易赤字が拡大するのは、一般には原発停止による燃料輸入増が原因とされる。しかし同紙は、輸出不振に言及し、中東の貿易収支だけが悪いわけではないと指摘する。例えば金融危機の損害が大きかったスペインとの貿易は、2008年には1970億円の黒字であったのに今や1630億円の赤字となり、ギリシャへの輸出は2008年から92%ダウンである。対アメリカも輸出が2008年より23%、輸入が18%低下している。

【なまじ数字が良いだけに日銀は動かない?】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は物価以外にも、12月の失業率が3.7%と2007年12月以来の低さで、有効求人倍率も2007年10月以来初めて1を超える1.03となり、鉱工業生産も前月比1.1%増、住宅着工件数も前年同期比18%増など、「近年では見られない強さを示している」と評した。

 しかしこれらは4月の消費税増税前の駆け込み需要とも指摘されており、労働者賃金が上がらない限り、増税後は需要冷え気味が予想されていると警告する。トヨタ自動車は、すでに4月以降日本での生産を減らす方針を決めていることも同紙は報じている。そしてなまじ経済指標が好調なことで、日銀が増税後に追加の景気刺激策を取らない見込みも強まっているという。

虚構のアベノミクス――株価は上がったが、給料は上がらない(野口悠紀雄)

Text by NewSphere 編集部