安倍首相「私はドリル」 既得権益の打破を表明 しかし海外紙は半信半疑

 22日、スイスで開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)で、安倍首相が英語で、日本指導者として初めて基調講演を行った。

 演説は「新しい日本からの新しいビジョン」と題し、日本がデフレ脱却寸前であると自賛しつつ、構造改革の推進を約束した(ほかに中国との緊張などにも言及した)。だが投資家らが期待するような実現具体性に欠けたため、海外報道は単なる大言壮語との印象も拭えないようだ。

【“日、没する国”から、超新星へ】
 首相は「今この声が聞こえますか?」「人々は今や、より活気に満ち、より陽気になっています。夕暮れではなく新しい夜明けが、日本で始まりつつあります」などと、アベノミクスの成功による経済立て直しをアピールした。さらに、春から労働者賃金が上がり消費増につながる見込みだと言明した。4月からの法人税率2.4%減税に伴い、企業が設備投資や昇給に資金を回すとの観測のようだ。

 演説の楽観性に特に懐疑的なニューヨーク・タイムズ紙は、「日本はすでにくたびれており、盛りを過ぎた」と揶揄されてきたのに対して、「彼の目からは、日本は日の沈む国であることをやめて経済の超新星になりつつあるのだった」と、皮肉めいた表現をしている。

 また、会議の創始者クラウス・シュワブ氏が首相を紹介する際「我々には大胆なコンセプトが必要であり、アベノミクスこそその大胆なコンセプトであります」などと述べるとともに、会議日程が国会会期とかぶらないよう配慮したとわざわざ強調したことについても、「最初から温かい歓迎を受ける態勢を整えていた」としらけ気味だ。

【俺のドリルに屈服せよ!】
 首相は「アベノミクス第3の矢」たる構造改革について、自らを「ドリルの歯」と称し、「あと2年間、いかなる既得権益も私のドリルの前に持ちこたえられないでしょう」と発言した。

 構造改革の内容としては、持株会社制度を利用した医療法人の大規模化、年金積立金管理運用独立行政法人GPIFの規制緩和と投資改革、電力市場完全自由化、減反撤廃、企業の社外取締役増による機関投資家のコーポレートガバナンス関与強化、さらに高齢化対策として女性や移民の労働力参入(2020年までに政治・経済指導層の30%を女性にする)、などが約束された。首相は「女性労働力は最も活用されていない資源です。日本は、女性が輝く場所にならなければなりません」と述べたと報じられている。

【息切れするまでに ど真ん中に命中できるか?】
 前日、国際通貨基金のオリビエ・ブランシャール氏は、日本の景気拡大は大半が財政刺激と輸出によるもので、「成長が続くには消費と投資がタスキを受け取らなければならない」と述べていた。

 また日銀も演説同日、輸入エネルギーコスト増が主因である最近のインフレが、いずれ失速する懸念を表明した。フィナンシャル・タイムズ紙は「第3の矢で安倍が黒点(ブルズアイ)を射抜けるかどうか」非常に注目されており、そして多くの人は懐疑的だ、と評している。

ニッポン再起動 こうすれば日本はよくなる!(竹中平蔵)

Text by NewSphere 編集部