「成長戦略進めば株買い増す」 海外投資家、アベノミクスに注文

安倍首相

 アベノミクス効果による景気回復の兆しなどを背景に、日銀の黒田総裁は繰り返し「経済は着実に中央銀行の目指す物価目標に向けて前進している」との見解を示している。

 日銀は4月、2年で2%インフレ達成の目標のために「量的・質的金融緩和」を導入し、マネタリーベース(資金供給量)を倍増する計画を発表した。また、7月に公表した中間評価では、2014年の成長率見通しを1.3%成長、2015年は1.5%とした。

 31日の金融政策決定会合でも、主要な政策は維持するとみられている。

 一方で黒田総裁は先週、アジア成長鈍化と債務上限をめぐる米国の政治不安が、日銀の「2年で2%インフレ達成」の目標を脅かす主要なリスクとなっているとの懸念も示した。

 海外各紙は、高まる海外リスクや、外国人投資家の見解を報じた。

【楽観的な日銀の見通し】
 日銀はまた、8月の消費者物価コア指数を前年比プラス0.8%としている。これは過去5年のうち最高レベルで、15年にわたるデフレ脱却の期待が高まっている。

 黒田総裁は10月初め、消費増税の影響を相殺するため政府が打ち出した5兆円規模の景気刺激策について、「成長率にかなりのプラス要因となる」と語っている。

 ただ、ロイターの調査によると、民間アナリストの予想は、2014年の成長率は0.9%と、日銀の見通しよりかなり低くなっている。

「日銀の成長見通しはもともと高く設定されている。(日銀は)5兆円の刺激策の影響で見通しを上げないだろう」という三菱東京UFJ銀行ジャパン・ストラテジストの関戸孝洋氏の見解をウォール・ストリート・ジャーナル紙は掲載した。

【高まる海外リスク】
 国際通貨基金(IMF)は今月、2013年の世界経済見通しを、7月時点の3.2%から2.9%に下方修正した。米政府機関の一部閉鎖などが要因とみられる。

 一方、中国の7~9月期のGDP成長率は前年比7.8%と、前期の7.5%から上昇。ただし、これは政府支援の国内投資によるもので、投資主導から消費者主導の経済成長へ移行したわけではないとの指摘がある。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、これら世界経済の減速は日銀の2%インフレ達成の目標に逆風だと報じた。

 ロイターは、「新興国市場の需要鈍化が輸出を圧迫しており、今年後半の成長はかなり遅くなる」とのアナリストの見解を掲載した。

【外国人投資家の見解】
 アベノミクスが外国人投資家に受け、日経平均株価は昨年11月~今年5月の間に80%も急騰した。しかし彼らは今、アベノミクス「第3の矢」の成長戦略について慎重な見方をし始めている。

 米国のヘッジファンド大手サードポイントは、「日本は岐路に立たされている」「第3の矢は依然、具体性に乏しい」との見解を示したという。

 外国人投資家らは日本に対し、雇用・解雇を容易にできる労働規制の緩和や、先進国で最高水準である38%の法人税引き下げを求めている。

 安倍政権が海外からの資金流入を持続させたいなら、第3の矢「長期成長戦略」の改革課題を早急に前進させる必要がある、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘した。

Text by NewSphere 編集部