日本人バスケ選手の歴史変える? 期待背負う八村塁に米メディアも注目 全米選手権で奮闘中

 バスケットボール界で、今最も注目を浴びている日本人といえば、八村塁選手ではないだろうか。宮城県明成高校からNCAAバスケットトーナメントの常連校、ゴンザガ大学に進学。1年生でまだ出場機会は限られているものの、その並はずれた身体能力で、田臥勇太選手に次ぐ史上2人目の日本人NBAプレーヤーになるのではと期待されている。

◆非凡な才能も、日本メディアは過熱し過ぎ?
 八村選手は身長203センチ、体重102キロ。母親は日本人、父親がアフリカのベナン出身で、今日本のスポーツ界で活躍する若いハーフ・アスリートの1人だ。中学校でバスケットボールを始め、高校時代にはその並はずれた身体能力で次々とゴールを決め、チームの優勝に幾度も貢献した。2014年にはU-17世界選手権で日本代表としてアメリカチームと対戦し、大敗したものの、チームの38得点中25得点をあげ、得点王(22.6点)に輝いている。2016年に米ワシントン州スポケーンにある強豪校、ゴンザガ大学に入学。今年のNCAAトーナメントでは控えのフォワードとしてベンチ入りしている。

 フォックス・スポーツは、八村選手を走れて、ゴールにも近づけ、3ポイントシュートも狙える多才な選手だと評価するが、まだ出場機会は少ないと述べる。それにもかかわらず、日本の報道陣は常に八村選手を追い、結果的にチームで最も(日本語で)インタビューされる選手になっているとし、日本メディアの過熱ぶりに驚いているようだ。フォックスは、八村選手自身が「多くの人が自分を知っている。だけど日本でだけ」と話したことを紹介し、田臥勇太に次ぐ二人目のNBAプレーヤーにという母国日本での期待があるのだろうと述べている。

◆英語の壁に苦労。今シーズンはまずまず
 ゴンザガ大学のマーク・ヒュー監督は八村選手の将来性を高く評価するが、「言葉の壁と戦ってきた」と述べている(AFP)。フォックス・スポーツによれば、渡米したときの八村選手は限られた英語しか話せず、地元のSpokesman Review紙は、英語コースに出席するため、シーズン前半は練習に参加できないことも多かったと報じている。

 当然コーチ陣とのコミュニケーションに苦労していたため、大学院生でチームのスタッフ・メンバーでもあるケン・ナカガワ氏が通訳としてサポートしている。ナカガワ氏によれば、八村選手はずっと英語の勉強を続けており、現在はだんだんと通訳の助けも要らなくなっているということだ。今や二人はコートの外でも親しい友人だが、八村選手からの申し出で、会話は英語ですることに決めているらしい(Spokesman Review)。

 実は、チームは八村選手の成長度合いと選手層の厚さも考慮し、「レッドシャツ」(選手資格を延長するため、留年して1年間選手生活を休止すること)を選ぶことも考えたが、本人が強くプレイすることを望んだため、あきらめたという。

 結果として今シーズン、八村選手は128分間出場し73得点を上げ、1分あたりの得点率でチーム2位となり、NCAAトーナメントでも6分間の出場を果たした(3月30日時点)。本人は、このシーズンを通じて、どのように試合の準備をし、いかにモチベーションを維持するかなど、メンタルなアプローチが改善されたと語り、手応えを感じているようだ。アシスタントコーチのトミー・ロイド氏は、八村選手は今の時点で順調な成長を見せており、次のシーズンにはメイン・プレーヤーとなる準備ができるだろうと述べている(Spokesman Review)。

◆NCAAデビューで優勝も?
 ゴンザガ大は、今年のNCAAトーナメントで史上初めて決勝に進出し、4月3日(日本時間4日)にノース・カロライナ大と対戦する。トーナメントに出場した初の日本人選手である八村選手が、優勝チーム初の日本人となる可能性も出てきた。

 ESPNによれば、今年のNCAAトーナメントには、49ヶ国から128人の外国出身選手が参加しており、ゴンザガ大では、八村選手を含め、ポーランド、フランス、デンマーク、カナダの選手がプレイしている。決勝戦では試合の展開によっては八村選手にプレイの機会は訪れないかもしれないが、恵まれた環境で各国の優れた選手と切磋琢磨し、次のシーズンではさらなる成長を見せてもらいたい。

Text by 山川 真智子