消える中間層:キャリアアップとキャリアダウン、どちらを選ぶ?

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 世界の経済発展を支え続けて来たミドルクラスが、今世界から消え始めていることをご存知だろうか?アメリカでは2021年までに60%もの中間層の職が減少することが予測されており、他先進国でも同じ動きを見せている。中間層として生きることができなくなった人々は、富裕層もしくは貧困層に移りつつあり、世界は二極化し始めているのだ。

 ミドルクラスとして生きることが難しくなる未来、あなたはキャリアアップとキャリアダウン、どちらを選択するのだろうか。

◆「普通の暮らし」に十分な給与はもう得られない
 「中間層に一体何が起こっているのか。それは、彼らの仕事をテクノロジーが奪い取っているということだ」。NBCニュースが2016年に行ったインタビューにて、シニアキャリアアドバイザーのマイク・アーウィン氏はそう語っている。それによると、経済学者たちは何年もアメリカからミドルクラスが消え始めている原因について議論を重ねていたが、新しい研究によってその原因の一つが明らかになったそうだ。その原因とは「中間層の暮らしを維持するために十分な給料を得られる仕事が消えているから」というのだ。

◆富裕層か貧困層。中間層が存在しない未来
 グローバル求人サービス会社CareerBuilderによる2016年の分析では、「2021年にかけて雇用が減る見込みの173の職業のうち、6割以上がミドルクラスの仕事である」と報告されている。さらに同調査は、16~21年の5年間で、低賃金または高収入の職の数がそれぞれ5%ずつ増加する一方、中間層の仕事は3%しか増加しないことを予測している(中間層の収入は、時給14〜21ドルと定義)。

 アメリカ、ジョージタウン大学教授であり『Whre Are All the Good Jobs Going』の著者、ハリー・ホルツァー氏は、中間層には「ほとんどスキルが必要とされない仕事と、より多くのスキルが要求される仕事の二種類がある」(NBCニュース)と述べ、前者はテクノロジーの進化による自動化で職が奪われ、後者はより高収入の職に移っていく、というのだ。
 
◆「偏極労働市場」で生き残る術とは?
 このような「中間層が消える」状態を、ワシントンD.C.を拠点に途上国への貸付を行う国際機関の世界銀行は「偏極労働市場」と呼び、アメリカを始めとする先進国で格差を広めていくと警告しているが、貧困層に陥らないために我々はどのようなスキルを身につけるべきなのだろうか?そのカギは「高い技能とコミュニケーションスキル」にあるようだ。

 ハーバード・ビジネス・レビューで紹介された論文『The Growing Importance of Social Skills in the Labor Market』の著者、デビッド・デミング氏は「高いスキルが要求され自動化が困難な職は、今後ますます高いコミュニケーション能力が必要とされるだろう」と述べ、「1980年代から職業的または給与的に最も継続的に成長している仕事は、高い認知能力と高度なソーシャルスキルが求められている」と紹介している。

 これらのことから、リサーチを行い情報を分析し問題を定義する「高度な知性」と、チームをマネジメントしたりクライアントとの関係性を良好に保つ「対人スキル」を併せ持つことが、今後の偏極労働市場を生き抜くカギであることが窺える。

◆あなたはどちらを選びますか?
 現在アメリカを中心に進む、労働者の富裕層と貧困層への二極化。今後ますます先進国で拡大するこの「中間層の消滅」は、日本人の多くの人にとっても他人事ではないはずだ。ミドルクラスに属すひとりひとりが、取り返しのつかなくなる前に、自らの将来のあり方や目指すキャリアの方向性を、真剣に見つめ直さなくてはならない時が来ているのかもしれない。

Photo via flickr/Hollywata, CC BY-ND

Text by 高橋由佳