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テスラ自動運転車で初の死亡事故、メーカーに責任は? 「公道でのベータ版テスト」に批判も

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テスラ自動運転車で初の死亡事故、メーカーに責任は? 「公道でのベータ版テスト」に批判も

 自動運転車が普及する社会がもうすぐそこまで迫っている。各メーカーは現在、実用化に向けテストを重ねている真っ最中だ。トヨタなどの日本勢は2020年の東京五輪・パラリンピックまでに市販車に自動運転技術を組み込んでいく予定。日本政府も全面的な支援を打ち出している。安倍首相は昨年秋、「2020年の東京には自動運転車がきっと走り回っている」と宣言。五輪開催導入を目指し、自動運転タクシーの実証実験も始まった。

 そんな中、一足早く自動運転モードを搭載して市場に投入されている米テスラ・モーターズの電気自動車で、初めての自動運転中の死亡事故が起きてしまった。米運輸省が6月30日、5月7日にフロリダ州で自動運転中の「モデルS」と大型トレーラーが衝突、モデルSに乗っていた男性が死亡したと発表した。モデルSは強い日差しを受けてトレーラーの白い車体を認識できず、減速せずにトレーラーに突っ込んでいったという。米当局は自動運転システムの設計や車の性能に問題がなかったか、調査を開始した。

◆事故前に自動運転を賞賛する動画を投稿
 米運輸省の発表によれば、直進中のモデルSが対向車線から左折(右側通行なので左側通行の日本の右折時のように対向車線をまたぐ形になる)してきた大型トレーラーに衝突。モデルSはトレーラーの下をくぐってさらに道路脇のフェンスを2ヶ所破ってポールに衝突し、半回転して止まった。トレーラーと衝突する前にブレーキをかけた痕跡はなかったという。

 テスラのニュースリリースによれば、「自動運転モードとドライバーのいずれも、明るい空を背景にしたトレーラーの白い車体を認識できなかった」という。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、「自動車メーカーの自動運転車開発競争は、コンピューターの方が人間よりも自動車を安全に運行できるという信念に支えられてきた。しかし、今、その見方にクエスチョンマークがついている」と書いている。

 死亡したのは、オハイオ州の元海軍技術士官で技術コンサルタントのジョシュア・ブラウンさん(40)。事故当時は一人で乗車していた。元同僚によれば、ブラウンさんはコンピュータの専門知識があり、最新テクノロジーへの関心が人一倍強い人物だったようだ。モデルSの自動運転も積極的に試しており、事故の1ヶ月前にはYoutubeにその性能を賞賛する動画を投稿している。走行中のフロントウインドウ越しの映像には、左側の追い越し車線から急に割り込んできたトラックを自動運転のセンサーが感知し、右にハンドルを切って危険を避けた様子が映っている。この動画に対しては、テスラのイーロン・マスクCEO自らが「自動運転機能が衝突を防いだ動画だ」と、賞賛するツイートを寄せている。

◆「メーカーにも責任の一端」と米誌
 詳しい事故原因については調査結果を待たなければならないが、事故当時は自動運転モードになっていてセンサーがトレーラーを検知できずに減速しなかったことと、運転者が自動運転技術に強い信頼を寄せていたことは確かだ。こうしたケースでは自動運転技術と運転者のどちらに責任があるのか?テスラはそれについては自社の見解を述べることは避けている(NYT)。

 自動運転車は、GPSやレーダー、カメラを利用して車線や周囲の状況を把握し、車線変更や衝突回避を行うことができる。日本でも今年1月から関連のサービスが始まっている。ただし、今のところ全てを「車任せ」にできることを保証するものではなく、テスラもあくまで「人の手による運転を支援するもの」だとして昨年10月に自動運転モードを搭載したモデルSを発売した。これを前提に、フォーブス誌は「テスラに責任はないのか?」と、メーカーと運転者の責任問題を問う記事を掲載している。

 カリフォルニア理工州立大学のパトリック・リン准教授が寄せた記事によれば、テスラは自動運転技術は今のところ「ベータ版のテスト段階」だとしており、自動運転モードを使う際には「必ず運転者自らが道路状況を注視する」という同意を顧客から取っているという。これを重く見れば、今回の事故はたとえ自動運転モードの不具合が直接的な原因だったとしても、従来のマニュアル運転と変わらず運転者の前方不注意が大きく問われることになりそうだ。とはいえ、リン氏は「ユーザーは実験台なのか?」と、ベータ版テストを公道で行うこと自体を問題視する。また、きちっとインフォームドコンセント(ユーザーが充分な説明を受けたうえでの同意)が取れていたのか、契約上の同意があったとしても法的に全責任を運転者に負わせることはできるのか、などといったことも疑問点に挙げている。「メーカーにも責任の一端はある」というのが同氏の見方だ。

◆2月の事故の教訓生かされず
 米メディアが自動運転の安全性に疑義を挟むのは今回が初めてではない。AP通信は昨年5月、トヨタ・レクサスをベースにしたグーグルの自動運転車が公道でのテスト走行中に、前年秋以降3件の事故を起こしたことをスッパ抜いた。追突されたといった「もらい事故」が多いようだが、グーグルはそれまで公式ブログで「事故ゼロ」を謳ってきただけに批判を集め、同社は結果的に自動運転モードと手動運転時のテスト走行においてその時点で11件の事故があったことを認めた(内訳は非公表)。さらに、今年のバレンタインデーにはグーグルの自動運転車と路線バスが衝突。AP通信は事故時の映像と共に「バス側に非はなかった」と紹介している。

 米政府内で自動運転を推進する立場にあるアンソニー・フォックス運輸長官は、グーグル車の事故を受け、「驚くべきことではない。道路上の技術であり、いつかは事故が起きるだろうと思っていた」と発言。「自動運転車に完璧を求めるべきではない。今現在我々自身が持っている能力、つまり、この目で見て脳で判断できることとの比較において議論すべきだ」と、自動運転は比較的安全ではあるが完璧ではないという考えを明確にした(BBC)。

 フォックス長官は、けが人が一人も出なかったグーグル車とバスの事故について、「数ヶ月内に事故状況を政府と業界にフィードバックすることが重要だ」と強調した。しかし、皮肉なことに、まさにその数ヶ月後に重大な死亡事故が起きてしまった。一つ一つの教訓が生かされなければ、「機械の方が比較的安全」だということも言えなくなってしまうかもしれない。

(内村浩介)

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