スターバックス“中国が最大の市場になる”、積極出店へ ブーム到来で毎年18%成長の予測も

 世界に2万3000店以上を展開するスターバックスが、中国市場での出店を加速させている。中国では近年コーヒー文化が爆発的に拡大し、ミドルクラスを中心にスタバ人気も定着した。景気減速でセールスが伸び悩む企業も多いなか、同社は中国市場で強気だ。一方、海外の人気コーヒーを利用し、一稼ぎする中国企業も現れた。

◆優良企業スタバ。株価は7年連続上げ
 スターバックスは、昨年のクリスマス・シーズンに、これまでのクリスマスデザインのカップからシンプルな赤いカップに変更。クリスマスを祝わない客に配慮したこのポリティカリー・コレクトな決断に苦情が殺到し、売り上げに影響すると危惧されたが、ふたを開けてみればそれほどでもなかった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は伝える。10-12月の北米および南米地区の既存店売上高は9%上昇し、アナリストの予想を上回った。新しく始めたモバイル注文&決済がセールスと利益を押し上げ、より高価なドリンクや朝食メニューの充実もセールスに貢献した(ブルームバーグ)。

 一方足を引っ張ったのは、欧州とアジア太平洋地区だ。スターバックスのケビン・ジョンソン最高執行責任者(COO)は、欧州では11月のパリ同時多発テロによる観光客減少が影響したと説明。またドル高も欧州、アジアの両方に打撃となったと述べた。アジア太平洋地区のセールスは5%上昇したが予測に届かず、中国の景気減速が関係したと見られている。同地区では営業利益率も低下しており、これは主に、合弁事業だった日本のスターバックスを完全子会社化したことによるとされる(ロイター)。

 スターバックスの株価は昨年46%上昇しており、7年連続の上げとなっている。これまで投資家からの期待は高かったが、中国の景気減速が長期的なものとなれば同社の収益にも影響する、とリサーチ会社『Conlumino』のアナリスト、カーター・ハリソン氏は指摘している(ロイター)。

◆CEOは強気
 中国経済の先行きが心配されるなか、スターバックスのハワード・シュルツ最高経営責任者(CEO)は、中国の将来性には自信を持っていると述べる。スターバックスは中国100都市にすでに2000の店舗を構えるが、今後5年間で毎年500店の出店を計画しており、シュルツ氏は中国が同社にとって最大の市場になると予測する(WSJ)。

 ユーロモニター・インターナショナルによれば、中国市場の年間消費量は45億杯(北米市場は1339億杯)だが、コーヒー消費量は2019年までに年間18%ずつ増加すると予測されており、アメリカの0.9%をはるかに上回る超有望市場だ。シュルツ氏は、今年から数百万ドルをかけ、中国の1万人の従業員に住宅費の補助を行うと発表(WSJ)。成長市場に賭ける意気込みを示した。

◆中国企業、コーヒーブームに乗っかる?
 サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)によると、コーヒー人気に目を付けた中国の『Lyancoffee』という会社が、中国版ライン「微信」の公式アカウントを使い、スターバックスやコスタ・コーヒーなど人気の海外ブランドコーヒーの注文を受け、デリバリーを行なっている。注文を受けると客の希望のコーヒー店に配達員が出向き、コーヒーを購入。注文から15分以内に指定の場所に届けるというシステムで、商品代金に加え2元(約35円)の配送料がかかる。すでに80万人が登録済で、上海、北京などの7都市でサービスを展開。毎日スターバックスのものだけで1万5000杯の注文があるという。

 有名コーヒー店とは何の関係もない『Lyancoffee』だが、ビジネスとして法律上の問題はないとのことだ。SCMPによれば、同社は自社ブランド「Coffee Box」を開発し、海外ブランドコーヒーの配達で獲得したユーザーを取り込むという次の展開を準備中。自社コーヒーの配達料は据え置くが、海外ブランドの配達料は5元(約90円)に値上げするという。1日5万杯のセールス目標を掲げるが、お味のほうも気になるところだ。

Text by 山川 真智子