“日本のマーケティングは一線を超えている…” プリウス部品の美少女キャラ化に海外困惑

 トヨタ自動車は、昨年12月に発売となった新型プリウスに関する広報企画「PRIUS! IMPOSSIBLE GIRLS」を18日から開始した。プリウスに採用されている部品やコンセプト40点について、それぞれの特徴をもとに女性キャラクターに擬人化。キャラクターについて知るうちにプリウスについても詳しくなる、という企画になっている。擬人化したキャラクターを用いたプロモーションは、日本ではさまざまな分野でおなじみだ。一部海外メディアも、そのことは承知しつつ、トヨタのこの企画には驚いたようだ。

◆「通常なら関心を持たなそうな層」にアピール
 トヨタのハイブリッド車プリウスは、昨年6年半ぶりのモデルチェンジを行い、4代目となる新型が12月に発売された。発売からおよそ1ヶ月の時点で約10万台の受注を獲得し、好調な滑り出しを見せている。

 「プリガー」こと「PRIUS! IMPOSSIBLE GIRLS」は、新型プリウスの性能を実現しているさまざまな部品やコンセプトをキャラクター化したもの。24人の絵師が参加し、10キャラクターには第一線で活躍する人気女性声優が声を当てている。(トレーディング)カードや缶バッジ、ビッグクッションといったグッズまで作成する念の入れようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)ブログ「日本リアルタイム」によると、このクッションは「少女たちの等身大」とのことで、どうやら抱き枕らしい。

 WSJによると、トヨタの広報担当者は「通常なら関心を持たなそうな層を引きつけることで、プリウス、トヨタ、自動車のファンになっていただきたいのです」と語ったそうである。おそらくは、「車離れ」が言われている若者層に、プリウスや車自体に関心を持ってもらうきっかけとなることを意図したものだろう。

◆擬人化キャラを用いたプロモーションは日本では普通だが
 擬人化したものなどキャラクターを用いたプロモーションは、日本ではよく行われるものだということは、海外メディアも承知している。

 アジアニュースサイトのアジアン・コレスポンデントは、トヨタが部品40点をセクシーでかわいいアニメ少女に擬人化することでプリウスを宣伝しているのは、「日本限定」と容易にわかる戦略だと語っている。

 WSJは、日本では、認知度を上げたり、売り上げを増やすため、漫画キャラクターや着ぐるみのマスコットキャラクターを用いることはおなじみであり、株式投資のプロモーションや政治家の選挙運動にも登場してきた、と語る。しかし時にはトラブルになることもあった、と述べ、三重県志摩市であった事例を紹介している。

 トヨタがこのようなPR手法を取ったことについて、WSJは、主力車種の1つである「プリウス」のイメージをよりエキサイティングなものにするためのトヨタの取り組みの一環である、としている。

 テクノロジー系ニュースサイト、米テックタイムズは、日本における自動車の販売促進活動は、ここアメリカとは少し異なっている、と語る。アメリカの自動車のCMも、しばしば奇妙なものになる傾向があるが、アメリカの自動車メーカーが越えようとは思わないラインというものはある、と語り、トヨタが行った擬人化はそのラインの1つだと語っている。

 同じく米のテクノロジー系ニュースサイト「バージ」となると、露骨に皮肉な口調である。日本でハイブリッド車を売ることはたやすい。どうやら必要なのは、部品を擬人化して、顧客がバッジ、抱き枕、タペストリーを買えるアニメのマスコットキャラクターにすることだけのようだ、と語っている。

 どちらの記事の筆者も、擬人化した2次元キャラクターを車の宣伝に使うことに違和感を覚えているようだ。テックタイムズの筆者は「これは私にいくらか居心地の悪さを感じさせるものだ」と語っている

◆プリウスは「セクシー」というイメージ作りの一環?
 米メディアは「プリガー」が「セクシー」だという捉え方をしているところが多い。一部ではそれが反感にも結びついているようである。

 トヨタ自身、日本で放送されたCMでは新型プリウスを「エロい」という言葉で形容している。それを受け、WSJは、最近トヨタは、かつては環境問題に意識の高いドライビングの象徴だったプリウスを、セックスシンボルに変えようと試みている、と指摘する。

 そこで「プリガー」についても、トヨタ・プリウスの「セクシー」化の一環だという見方が出た。米フォーチュン誌は、トヨタはプリウスが「セクシー」と納得させるために漫画キャラクターを用いる、と報じた。

 同誌によれば、プリウスには、「セクシー」だとか、わくわくするようなハイブリッド車だという世評はない。「信頼できる」「環境に対して意識が高い」「賢明な」といった言葉のほうが、プリウスとそのオーナーにはしっくりくる、と述べている(AP通信の過去の報道によれば、アメリカではトヨタ車には、性能や信頼性は高いが、華やかさがなく没個性的というイメージがあるようだ)。

 けれども、トヨタは消費者に、プリウスを見て「セクシー」と考えて欲しがっている。そこでトヨタは「プリガー」を作り上げた、というのがフォーチュン誌の説明である。「プリガー」については、露出の多い服を着た、目の大きな40人の女性と、かなり十把一絡げな捉え方をしている。

 フォーチュン誌が紹介している「プリガー」No.13は、プリウスの「リヤビュー」を擬人化したもので、背中のざっくり開いた服を着ている。英語版のキャッチフレーズは「背中には自信があります。どうぞそれを見て楽しんで」(日本語版は「自慢の背中、どうぞ見惚れて?」)というドキッとさせるもので、フォーチュン誌の見方にも無理からぬところがあると感じせられる。

◆「過度なセクシー」だと嫌悪感をあらわにするメディアも
 フォーチュン誌は「プリガー」の「セクシー」さについて、中立的に伝えているが、バージのほうははっきりと批判的である。

 使用されている素材の一部は、弁解の余地なく不届きなものである、とバージは語る。キャラクターたちの多くは、どう見てもティーンエージか、もっと年少と思われるが、不必要に性的特徴が強調された服を着せられている、と非難する。

 トヨタは「リヤコンビネーションランプ」を擬人化(No.22)して、お尻に注目させるコスチュームを着させているが、トヨタがなぜそうしようと思ったのかは、トヨタが未成年の少女を性的に崇拝する人々にアピールしようと試みているのでないかぎり、理解が困難だ、と語っている。ハイブリッド車は、トヨタがこれほど必死にならないといけないほど売れ行きが悪いわけではない、とバージは語っている。

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Text by 田所秀徳