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インドネシア高速鉄道、なぜ日本は敗れたのか?・後編 なりふり構わない中国

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インドネシア高速鉄道、なぜ日本は敗れたのか?・後編 なりふり構わない中国

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 一時は確実視されていた新幹線のインドネシア導入計画。閣僚に中央大学卒業生のラフマット・ゴーベル氏が入ったことで、この事業は進展するかと思われた。だが、そのゴーベル氏は地方首長との会談を取りまとめた直後、内閣改造の網をかぶり辞任してしまう。日本側は大きなパイプを失った。そこに何があったのだろうか?

◆中国の一手
 中国側の本格的な動きは、今年3月から始まった。

 ジョコ・ウィドド大統領の中国訪問は、日本訪問スケジュールに続いて行われたものだ。そこで、習近平国家主席と高速鉄道建設に関する覚書を交わしたのだ。もっともこれをもって、中国側の受注が決定したわけではない。1月にインドネシア政府が発表した計画凍結は、この時点で正式に覆ってはいなかった。

 それにアドバンテージの点で言えば、なおも日本側に傾いていた。日系財界は中国側のそれよりも、インドネシアとのパイプが強固である。ゴーベル氏や前編で紹介したバンドゥン市長リドワン・カミル氏もそうだし、インドネシア経営者協会の前会長ソフヤン・ワナンディ氏も新幹線を推していた。

 現地紙コンパスに、ワナンディ氏のコメントがある。「日本の新幹線は半世紀の間に事故がなく、しかも円借款の金利が安く設定されている」
ざっくり総括すると、ワナンディ氏はこう言ったのだ。ちなみにこの記事が配信されたあと、日本側は金利をさらに安く設定し直している。

 だがその代わりとして、日本側はインドネシア政府の債務保証を要求した。これが最大の争点となったのだ。さらにこの時、ゴーベル氏は高速鉄道とはまったく関係のない分野で取り返しのつかない失策を繰り返してしまった。

◆失策の続くゴーベル
 今年4月から、インドネシアでは飲食店を除く小規模店舗での酒類販売が禁止になった。その目的は「青少年の健全育成」で、宗教は関係ないと貿易省はコメントしていた。

 ここで言う小規模店舗とは、主にコンビニエンスストアである。全国のコンビニからビールが消え、それに伴い国内の酒造メーカーは大打撃を被った。その一方で全国津々浦々にある個人商店は、そもそも小売店なのか飲食店なのかを区分けすることが難しい店が殆どだ。早い話が、いくらでも抜け道のある規制なのだ。

 さらに貿易省は、オーストラリアからの食肉牛の輸入制限枠を厳格化した。もともとインドネシアとオーストラリアは、外交的には険悪というべき間柄だ。しかし同時にインドネシアは農業大国オーストラリアに食料を依存している。それを覆したことにより、インドネシア国内の牛肉価格が30〜40パーセントほど高騰したまま止まってしまったのだ。地域によっては50パーセント高という所も出始め、闇市まで立つ始末だった。

 これらに関する大臣令を発したのは、ゴーベル氏である。結局、ゴーベル氏は事実上の引責辞任に追い込まれ、涙を流しながら貿易省を後にした。

 日本側関係者の積み上げてきたブロックが、一気に崩壊した瞬間である。

◆「技術立国」が負けた日
 9月に入ると、インドネシア政府は高速鉄道計画の白紙化を宣言した。現地メディアのデティック・ドットコムが、その理由を伝えている。「ジャカルタ〜バンドゥン間は高速鉄道がその性能を発揮できるほどの距離ではなく、実際には中速鉄道で充分だ」。

 だがこれは政府見解である。敢えて悪い表現を使えば「大本営発表」だ。その水面下では、中国側が動いていた。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というのは孫子の一節だが、今回の中国側はそれを実行した。

 インドネシアの現政権は、ジャワ島のインフラ整備に国庫を使いたくないのだ。実はこの辺りに、日本の財界人とインドネシア政府との温度差がある。中規模都市のスラム街で生まれ育ったジョコ氏は、「全ての国民に富を行き渡らせる」と公言して大統領選挙に当選した。これは治安維持の面でも非常に重要だ。かつては熾烈な独立闘争を繰り広げていたアチェ地方の住民は、中央政府によるインフラ整備の優先度を前押しさせていることで平静を保っている。だからインドネシア最西端の都市バンダアチェは、全国でも早い段階でLTE回線が通った。

 インドネシアは広大である。この国の最西端から最東端までの距離は、スウェーデンのストックホルムからロシアのヤクーツクまでの直線距離よりもまだ長いのだ。本来はその一片に過ぎないジャワ島のためだけに、限りある国家予算を削ぐわけにはいかない。円借款も、ジャワ島とバリ島を除いた地域のインフラ整備に使わなければという思惑がある。

 中国側はそんなインドネシア政府の心理を巧みに操ってみせた。そして計画の白紙化宣言から僅か20日後、インドネシア政府は計画継続を唱えた。「白紙化の白紙化」である。最終的にその受注は、中国側に行ったのだった。

 インドネシアの現地市民から見れば、この出来事はかなりの衝撃だったようだ。各メディアの記事の見出しを見ても、「中国が高速鉄道を受注」というものより「日本が負けた」というニュアンスのものが多い気がする。それは「世界一の技術立国が受注合戦でまさかの敗北」という意味合いも大いにある。以上が今回の高速鉄道合戦の経緯である。

(澤田真一)

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