“日本企業に必要なのは外国人取締役と女性役員” LIXIL初の外国人社外取締役が指摘

 その独特の企業文化から、海外投資家に透明性が欠如していると批判されてきた日本企業。しかし、安倍政権による企業統治改革で、変化の兆しが見えてきたようだ。キッチンや浴室設備などを扱う企業LIXILに、初の外国人社外取締役として迎えられたバーバラ・ジャッジ氏が、日本企業に求められる変化について語っている。

◆社外取締役は増えつつあるが…
 ジャッジ氏は、米英の国籍を持つ女性弁護士で、英国年金保護基金の会長でもある。米国証券取引委員会、英国原子力公社などの要職を歴任し、東京電力の原子力改革監視委員会の副委員長も務める、グローバルなビジネスウーマンだ。

 英フィナンシャルタイムズ紙(FT)に寄稿した記事の中で、同氏は日本の大企業の役員室で変化が起こっていることを指摘する。新しい企業統治指針導入で、取締役会には経営から独立した社外取締役の選任が求められることになり、東証上場企業の94%が社外取締役を置くようになったことを評価している。そして、さらに日本企業に必要なのは、外国人取締役と、女性役員だと語っている。

◆縛りのない外国人、模範となる女性役員が企業を変える
 ジャッジ氏は、先人の行いや、社会的、文化的規則といった日本人に課せられる負担がない外国人は、言いづらい質問がより自由にできると述べる。そして、外国人を役員として迎えた会社もまた、彼らが間違えに対して黙ったままとは考えていないと指摘する。オリンパスの元執行役員で、会社の損失隠しをあばいたマイケル・ウッドフォード氏の名を知らない企業のトップはおらず、外国人を役員に任命する会社はすべてにおいて綿密さが必要となることは、今や覚悟の上だというのが、同氏の見方だ。そしてそれでも外国人が必要とされるのは、日本人ではないことで、異なる考え方を会社にもたらすことができるからだと述べる(FT)。

 ジャッジ氏はまた、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)のインタビューに対し、日本のビジネス界には、経験豊かではっきりとものを言うことのできる、男女両方にとっての模範となる女性役員が必要だと述べ、それがLIXILの社外取締役を引き受けた理由だと説明している。同氏は、弁護士や会計士など、すでにビジネス界にいる女性たちの中には、役員になる能力がある人が多くいると指摘。しかし、数字や書類の理解が苦手なことが女性登用の壁になっているとし、男性と同様の教育を女性に行うべきだと語った。また、自身のFTの記事においては、政府だけでなく、ビジネスリーダーからの絶え間ないプレッシャーも、働く女性の育成には必要だと述べている。

◆オリンパス事件後、変わる企業統治
 デジタル経済メディアの『The Street』は、固い絆で結ばれ、適応が遅い日本の企業文化が、アベノミクスの改革を受け入れらないのでは、と多くの人が危惧していると述べる。だが、オリンパス事件を機に、透明性と監督の強化が日本企業によって求められるようになったのは、否定できないとも述べている。

 ワシントン・アンド・リー大学の経済学教授、マイク・スミツカ氏は、東芝の不適切会計事件での役員辞任などは、オリンパスのときよりもずっと「内部的にも外部的にもアクションが早かった」とし、すくなくとも表向きには、日本における企業統治の状態はよいことを意味すると語っている。

 しかし、会計士の団体である、ACCAの昨年11月の調査によれば、長年の透明性の欠如が響いて、理想の投資環境としては、日本は25ヶ国中21位だったという(The Street)。変化のスピードは遅いものの、海外投資家の信頼を得るためにも、日本の企業統治改革は、前進させなければならない。

Text by 山川 真智子