日本初のカジノ、東京ではなく大阪? トップの姿勢に違い 参入狙う外資も注目

 9月29日、第187臨時国会が召集された。今国会の目玉といえば、6月に審議入りした後、継続審議扱いとなっている「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(IR推進法案)」、いわゆるカジノ法案だ。

 正式にはまだ何も決まっていない。しかし、推定市場規模が1兆円以上とも言われる日本のIR(カジノを含む統合型リゾート)は、何も決まっていない段階から常に極めて高い注目を集めてきた。特に、今国会ではいよいよ可決の見込みが強いことから、一層その気運が高まっている。

【IR議連の意気込み】
 ブルームバーグによると、IR議連(超党派のカジノ推進議員連合)の事務局長を務める自民党の萩生田光一議員氏は「IR推進法の衆議院通過は10月前半を目指す」と発言している。

 また萩生田氏は、日本人には5000円ほどの入場料を課すのがいいと思われることを同誌に語っている。邦人への入場料課金は、シンガポールの例に倣ったものである。シンガポールでは、シンガポール国民は1回の入場に100シンガポールドル(約8600円)を払うか、もしくは2000シンガポールドル(約17万2000円)の年間パスが必要となっている。外国人は入場無料である。

 さらに萩生田氏は、最初のカジノリゾートは地方ではなく都市部が適切であること、税率は国際基準にならい、比較的低めに設定すべきであることもあわせて発言している。

【ふたつの懸念】
 ロイターは、ここへ来て東京のカジノプロジェクトに立ちはだかる2つの壁を挙げている。ひとつは、高騰する建設費、もうひとつが、舛添要一都知事だ。まず、震災復興とオリンピックの建設準備により建設コストが軒並み上昇し、そこへきてさらに、舛添都知事が6月に、カジノについて「最優先課題ではない」と発言したことが追い打ちをかけた。

 匿名希望の都職員たちの話では「都知事はオリンピック準備の膨大さに圧倒されてしまい、カジノを後回しにせざるを得なくなったのでは」と語られている、と同メディアは報じている。さらに職員たちの話によると「都はコストが心配になってきたので、オリンピック計画のスケールダウンを考えている」とも囁かれているらしい。電通の岡部智氏(カジノ・観光プロジェクト部部長)は「コストの膨張は、外資のデベロッパーにとっても懸念となっている」と発言している。

 しかし一方、大阪は一路カジノ計画を推し進めている、と同メディアは伝える。

 大阪府の松井一郎知事はカジノを「成長エンジン」として捉え、既に候補地を大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)に決めている。カジノ事業者と精力的に会談を持つなど、カジノ誘致に積極的に活動している。

 米シーザース・エンターテインメントは「大阪が第一候補」とずっと言い続けており、国際開発担当スティーブ・タイト氏は「大阪プロジェクトについて日本の有力なパートナー達と話を進めている」と語っているという。

【米投資情報サービスの分析】
 日本のカジノ創設には、既に実積ある外資が複数名乗りをあげている。アメリカの投資・金融情報サービス企業モトレー・フール社は、日本のカジノ進出に手を上げている外資各社の中から、ラスベガス・サンズ、ウィン・リゾーツ、MGM、メルコクラウンの4社を挙げ、それぞれの企業の特徴を述べている。

 同社トラビス・ホイム氏の分析によると、オファーではラスベガス・サンズに利があるが、ウィンのディテールを尽くしたハイクラスなデザインは日本の文化に沿うだろうとのことである。

 一方MGMはいまだシティー・センター(ラスベガスの複合リゾートで、うちひとつのホテルに構造上の欠陥が発覚し開業することなく解体中)の痛手から回復の途中である。シティー・センターについては「かかわるデベロッパーが多過ぎると失敗する例」と指摘している。

 また、他がラスベガスを本拠地とする中、唯一マカオから名乗りをあげるメルコクラウンの可能性は未知数、とホイム氏は言う。マカオのカジノ王、スタンレー・ホー氏の実息であるローレンス・ホー氏がCEOを務めるメルコクラウンは、マカオでのコネクションを活かしフィリピンでも認可を得ており、今年オープン予定の同店も成功が見込まれている。とはいえ、他より歴史と実積の浅い同社に日本が旗艦となる店をまかせるだろうか、とホイム氏は考えているようだ。

 以上のことから、日本での地位を勝ち取る可能性が一番高いのはどこなのか。ホイム氏は「経験が長く、ハイレベルなゲーミング企業がふさわしい」ことから、MGMが最有力と考えているようだ。実はMGMもまた、自社のビジョンとして大阪を明確に表明している企業である。どうやら東京は、まずは各方面の懸念を払拭する必要があるかもしれない。

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Text by NewSphere 編集部