ノバルティス“1万例の副作用報告遅延”…ガン治療薬副作用の多さに海外メディア注目

 東京地検特捜部は12日、薬事法違反容疑で、スイスの大手製薬会社ノバルティスの日本法人ノバルティスファーマの本社を家宅捜索した。前日の11日には、同社の元社員である白橋伸雄容疑者が、同じく薬事法違反容疑で逮捕されている。同社の高血圧治療薬ディオバンの論文データ改ざん事件は、会社ぐるみの可能性が高まってきた。

【製薬会社と大学の癒着の疑い】
 ノバルティスファーマは、同社のベストセラー高血圧治療薬であるディオバンの販売促進を図るべくデータを改ざんした容疑がかけられている、とロイターは報道している。

 ディオバンと他社の高血圧治療薬との比較臨床実験が、京都府立医大や慈恵大学など5つの大学で実施された。白橋容疑者は、同社社員であることを隠して、臨床データの解析担当者として実験に関与していた。同容疑者は、京都府立医大の研究チームから回収したデータを改ざんし、2011年にディオバンに有利になる論文を書かせた、と『Drug Discovery and Development Magazine』は報道している。

 同社は改ざんデータに基づく研究論文を引用し、ディオバンの効能を過大に宣伝するような広告やパンフレットを作成していた。

 2000年11月に発売開始されたディオバンは、2005年以降毎年1000億円以上の売り上げをみた。2012年までに、ディオバンの累計販売額は1兆2000億円に達した、と同メディアは報道している。

 一方、ノバルティスファーマは2002年から2012年にかけて、京都府立医大と慈恵大学に総額5億7千万円の寄付をした、と同メディアは指摘している。

 ディオバンの論文データねつ造事件以外にも、ノバルティスの不正が明らかになっている。

【薬品副作用情報報告漏れ】
 9日、ノバルティスは、社内の安全性評価部門に社員が報告する同社製品の有害事象関連の資料について、推計で約1万例分の報告が遅延していたと発表した。

 スイスに本拠地を置くノバルティスは、EU域内の薬品安全管理業務の一端として、安全性報告を行う法的義務がある。当社は、「個別症例安全性報告(ICSR)の遅れは、当社行動規範の明らかな違反」と認めている、とBBCは報道している。

 ノバルティスの内部調査によると、ガン治療薬であるGilvecとZometa、免疫抑制剤であるCerticanが頻繁に報告されていた、とBBCは指摘している。

 重大な副作用情報の報告漏れは薬事法違反を問われる可能性があり、ノバルティスに垂れ込めている暗雲は晴れる様子がない。

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Text by NewSphere 編集部