武田薬に米史上7番目の賠償命令 海外紙“控訴審で大幅に減額されるだろう”

 米ルイジアナ州の連邦地方裁判所の陪審は7日、糖尿病治療薬「アクトス」に発がんリスクがあることを隠ぺいしたとして、武田薬品工業に60億ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じる評決を下した。

 武田薬品と提携し1999~2006年にアメリカでアクトスを販売したイーライ・リリーには、30億ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じた。

 武田薬品は8日、この評決に対抗する方針を示し、「アクトスの治療効果と、2型糖尿病を治療する上でのその重要性に自信を持っている」と述べた。

 イーライ・リリーも評決に反対。ただ、両社の定款に基づき、損失は武田が負担することとなるとした。

【武田薬品を訴える他の多くの原告にとって励まし】
 米連邦裁判所でアクトスをめぐる判断が下ったのは初めてとなる。

 アメリカ食品医薬品局が2011年に、1年以上アクトスを使用すると膀胱がんのリスクが高まる可能性があると警告して以来、武田薬品は数千件の訴訟を抱えている。同局は、1年以上アクトスを服用した人は、服用しなかった人と比べ、膀胱がんのリスクが40%高くなると推計している。

 今回はアクトスにより膀胱がんになったとするテレンス・アレン氏の提訴に対する評決で、陪審はさらに同氏に対する150万ドルの補償的賠償額を命じている。アレン氏は「評決に圧倒された。賠償額よりこの薬が危険であることを証明したい」と述べたという。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、この初勝利は武田薬品を訴える他の原告の励ましとなることは確かで、経営再生のため新しい外国人を迎えた同社の経営陣には打撃だと報じた。

 武田薬品は近年、ジェネリック医薬品との競争や、発がんリスクの懸念のため、売上は激減している。その中、英製薬大手グラクソ・スミスクラインの元幹部、クリストフ•ウェバー氏が6月に次期社長に就任する予定だ。

【今後の裁判の行方は?】
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、バージニア州のリッチモンド大学のカール・トビアス教授が、今回の評決はアメリカ史上で7番目に大きな懲罰的損害賠償だとコメントしている。

 ただ、前例により、控訴裁判所は減額し、判決を覆す可能性もあると同教授はいう。また、最高裁判所は、懲罰的損害賠償は補償的賠償額の10倍を超えるべきでないとしているとし、この件の補償的賠償額は約150万ドルであるため、最終的な賠償額は約1500万ドルに大幅に減少するだろうと述べたという。

 フィナンシャル・タイムズ紙もまた、損害は裁判で大幅に減り、控訴審で覆る可能性があるというアナリストの見解を掲載。アナリストは、昨年カリフォルニア州とメリーランド州で陪審が下した両社への数百億ドルの賠償が後に破棄されたことを指摘したという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、控訴審で損害賠償額は大幅に減額される傾向にあると指摘。数十億ドルの懲罰的損害賠償はアメリカの陪審裁判では珍しくないと報じた。

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Text by NewSphere 編集部