香港で宅急便(Ta-Q-Bin)革命? クール便、時間帯指定配送…ヤマト運輸の高品質サービスが人気

 日本では当たり前の存在となった宅急便サービスが、海外でも広がっている。ヤマトグループは、2000年の台湾を皮切りに、上海、シンガポールなどでサービスを稼働。

 特に、香港での「Ta-Q-Bin」(宅急便)サービスは現地メディアに注目されている。

【なぜ香港か?】
 香港内の投資ビジネスを紹介するサイト「InvestHK」は、香港ヤマト運輸株式会社の前島淳太社長にインタビューを敢行。同社長は、香港を選んだ理由について、「活気ある経済、貿易や法律の自由さ、アジアの中心であること」の3つを挙げた。

 さらに記事の中では、「企業と個人を結ぶ運送市場にまだ余地があること」、「交通網が発達し地域が密接していること」、しかし「車の個人所有率が低いこと」などの具体例を示し、Ta-Q-Bin事業に十分な需要があるとの見込みも紹介されている。

【どのようなサービス展開か?】
 香港には既に、様々な規模の運輸サービスが、多数存在している。しかし日本と比較すると、料金・信頼性・時間など、総合的なサービス面で劣ることは否定できない。

 Ta-Q-Binはその点を踏まえ、サービス面での差別化を目指すという。集配から配送までのドアツードアサービス、冷凍クール便対応、商品と引き換えでの代金支払いなど、これまでの香港にはなかった便利さを売り込んでいくとともに、ドライバーの教育にも力を入れていく方針だ。最短で当日も可能な時間帯指定配送や、コンビニからの発送サービスなども展開されている。
 
【現地の反応】
 実際香港では、日本でおなじみの「クロネコマーク」のトラックが増えてきている。

 香港在住者のブログでも、「集荷に来てくれて、日本みたい」、「リーズナブルな価格設定」、「本当に翌日午前中に届いた!」などの歓迎する内容が多い。「なかなか電話がつながらない」、「指定時間に遅れてきた」などの不満もみられるが、こちらは香港の他業者では当たり前で、ある意味仕方ないと捉えられているようだ。

 また、筆者(香港在住)が実際に使用したところ、「冷凍食品が冷凍のまま届いた」、「指定時間帯内に配達された」などのサービスに驚かされた。日本では当たり前かもしれないが、従来の香港では考えられなかった内容である。

 さらに、時間に遅れそうになったドライバーが謝罪の電話をかけてくれたり、配達時にドライバーから「ありがとうございました」と深々と頭を下げて感謝されたり、と、心遣いが嬉しかった。

【今後の香港運輸市場の行方】
 親切丁寧な上に、便利なこのサービス。在香港日本人だけでなく、経済的余裕を持つ香港人にとっても魅力的に映る可能性は高く、Ta-Q-Bin革命は歓迎されそうな雲行きだ。

 しかし、ローカル運送には安さという独自の利点があり、Ta-Q-Binシステムが他社にも浸透するかどうかはまだ読めない。当面の香港運輸市場は、Ta-Q-Binが加わったことにより、高品質なサービスと安価で手軽なサービスとに、二極化していくのではないかと思われる。

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Text by NewSphere 編集部