日本で外車が売れないのはなぜ? 「日本市場のせい」VS「海外メーカーの戦略ミス」

 日本で外国車の売り上げが伸びない原因は、どこにあるのだろうか?

 米フォードの新車フィエスタが日本で発売されたことをきっかけに、海外メディアで様々な分析が発表された。特に論旨が目立って異なっていた大手メディアは、ニューヨーク・タイムズとロイターの2社。米大手新聞ニューヨーク・タイムズは、原因を規制や商慣習にみている。一方、英報道機関ロイターは、国外メーカーの販売戦略に焦点をあてた。

【外国車を取り巻く非関税障壁を問題視するニューヨーク・タイムズ】
 ニューヨーク・タイムズは9日、フォードの新車フィエスタの日本発売を報道。記事の後半では、そもそもフォードがこれまで日本市場のマーケットシェアの0.1%しか獲得することができなかった理由を考察した。

 記事では、主にアメリカの自動車メーカーらの声を紹介。ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラーの大手3社を始めとする米自動車メーカーは、日本の自動車市場には、国外自動車メーカーに不利となる非関税障壁が存在し、アメリカ車の日本市場進出を阻んでいるとみているようだ。

 同記事は、非関税障壁として、日本の自動車ディーラーが外国車の取り扱いを避ける傾向があること等、商慣習に関するものをあげた。さらに、日本独自の認定制度の基準を満たすための手続きが高価かつ煩わしい、といった制度上の問題をあげている。

 特に後者に関して言えば、日本独自の排出ガス規制基準や安全基準、スマートエントリー(遠隔操作の自動車キー)の周波数の違いなどが、国外自動車メーカーが自社製品を日本向けにカスタマイズせざるを得ない状況を作り出しているそうだ。

 さらに最近では、“日本が円安をつくりだし、国外自動車メーカーの日本市場参入を阻んでいるのではないか”と主張する声も、米自動車業界から聞こえているという。

【日本の顧客のニーズに応えていない?販売戦略を批判するロイター】
 対して、1月12日付のロイター記事では、米自動車会社の日本での営業不振の理由は、日本の経済低迷や、日本と国外の自動車文化の差異にあると主張。日本市場のニーズに即して販売戦略を刷新しない米自動車メーカーらを、「貨幣操作や非関税障壁を批判するものの、ニッチなニーズにしか応えていない」と批判した。

 ロイターの記事では、日本国内の外国車ディーラーのインタビューを引用。インタビューによれば、アメリカ車の派手なデザインや燃費の悪さが、日本人顧客のニーズとミスマッチしているそうだ。

 また、インタビューに応じたこの外国車ディーラーの場合、1990年代半ばには月間約70台あった売り上げ台数が、インタビュー時点で月2、3台にまで下がっているそうだ。日本経済の低迷の影響もうかがわせた。

 同記事はさらに、アメリカ車の売り上げをドイツ車のそれと比較。昨年のフォードの売り上げ台数4,200台に対し、ドイツの自動車メーカーフォルクスワーゲンは673,000台を記録した。同記事では、昨年11月にフォルクスワーゲンのゴルフが、輸入車として初めて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことにも言及し、国内でドイツ車の存在感が増しているとした。

【両紙とも日本の自動車文化の独自性に言及】
 両紙の報道の論旨は大きく異なっていたものの、共通して言及していた点は、日本の顧客の嗜好の独自性である。日本の顧客が「ミニカー」や「ハイブリッドカー」を好むことは広く知られているところ。この独特な自動車文化は、外国車を日本市場に参入しにくくするだけでなく、日本車が海外市場での競争力を失う原因となり得るのでは、と懸念を示す報道も海外メディアに存在している。

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Text by NewSphere 編集部