「建てれば客が来る」アジアのカジノ建設ブームに海外紙が警鐘

 アジアではここ数年、カジノビジネスが注目を集め競争が加熱している。世界的なカジノリゾートを有するマカオが施設を拡大している他に、フィリピンやベトナムで大規模なカジノの建設計画がすすんでいるようだ。

 日本でも2014年には、国内にカジノ建設を初めて認める法案が成立する見込みだ。

【アジア全域でのカジノビジネスの盛りあがり】
 2013年は、カジノビジネスの活発な動きに伴い、アジア地域へより幅広い投資家が参入した、と香港の経済誌ファイナンスアジアが報じている。今後もこの傾向は続くとみられている。

 3月、フィリピンのマニラ湾岸に、マカオに対抗する大規模カジノリゾートがオープン。投資額は10億ドルだという。さらに同月、マカオのリゾート開発・運営会社メルコ・クラウン・エンターテインメントは、フィリピンの開発業者ベル コーポレーションに対し、2014年3月オープン予定のカジノ施設のため、6億ドルの資金援助に合意した。同地域では、今後4年間でさらに2つの施設が建設予定だ。

 スリランカでは、首都コロンボに、オーストラリアのクラウン・インターナショナル・ホールディングスと共同経営の4億ドルのカジノ建設が認められたばかりだ。

 ファイナンスアジア誌では、ロシアや日本、韓国を要注目と専門家がコメントしている。フィナンシャル・タイムズ紙も、最も注目されるのは日本だと指摘している。同紙によると、マレーシアの娯楽企業大手ゲンティンは日本でのカジノ法案成立を見越して、既に東京と大阪に狙いを定めているという。

【カジノビジネスの将来は明るい?】
 海外各紙はアジアでの競争加熱を伝える一方で、アジアでカジノビジネスを行う難しさを指摘している。フィナンシャル・タイムズ紙は、アジアではカジノを「作れば、客がくる」という好景気のようだが、これからの新しいカジノも客で埋めることができるかは予測できないとしている。

 同紙は警告としてベトナムの事例を挙げている。ゲンティンは2年前、ダナン市に新しい施設を計画していたが建設の取りやめを決めた。アメリカのカジノ大手ラスベガス・サンズも、ベトナムでの計画が頓挫した。これらは、ベトナム国内の住民にカジノで遊ぶことが認められそうになく、中国からの旅行客だけに頼ることは経営に不利だと判断したためだという。

 アジアのカジノビジネスのほとんどは、中国からの富裕層に狙いを定めているという。このため、同国の経済成長に大きく左右される傾向が強い、とフィナンシャル・タイムズ紙は弱点を指摘している。また格付け会社フィッチ・レーティングスは、アジア地域での個人所得の増加が好影響するとして、中期的にはカジノ事業成功が見込まれると予想しているが、供給過剰になれば、事業の見通しは難しくなるだろうとみている。

Text by NewSphere 編集部