韓国地裁、金正恩氏に賠償命令 爆破で与正氏告発も 南北関係さらに悪化か
◆「ワームビア方式」で賠償金確保か
中央日報は「北朝鮮政権の人権および財産犯罪に対して正恩氏を相手に金銭的賠償を受け取ることができる道が開かれた」と述べ、意義のある勝訴だとの見方を示した。現在韓国国内に戻っている韓国兵捕虜は、故人も含め80人に上る。2人が勝訴したことは、損害賠償に一定の見込みが立ったことを意味する。残りの生存者21人のほか、故人の遺族の意志を受けたサポート団体が追加訴訟に踏み切る公算が高い。同紙はさらには、拉致被害者にも訴訟の動きが広がる見込みだと報じている。
北朝鮮側が賠償金の支払いに応じる公算は低いものの、実質的に北側に賠償金を負担させる見込みはある。北朝鮮への支払いが保留されている資金を差し押さえることで、強制的に賠償金を徴収するという手法だ。ハンギョレ紙の説明によると、韓国国内の放送・出版社は、北朝鮮に関する著作物を使用した対価として、北側に著作権料を支払っている。通常であれば南北経済協力財団を通じて北側に送達されるが、2008年に韓国人観光客を北朝鮮兵が射殺して以来、制裁として送金が保留されていた。これを差し押さえて賠償金に充てるという手段が今回有力視されている手法だ。
過去にはアメリカで北朝鮮に対して同様の訴訟が起きており、北朝鮮当局に拘束され、帰国後死亡したアメリカ人学生、オットー・ワームビア氏の遺族が勝訴している。遺族らはアメリカ国内にある北朝鮮の隠し資金を差し押さえることに成功した。以来、北朝鮮国外の資金を差し押さえ賠償金に充てるこの手法は一部で「ワームビア方式」と呼ばれている。