欧州駐留米軍が果たす役割とは ドイツ削減方針に議会有力者が懸念

ラムシュタイン空軍基地(2009年10月)|U.S. Army Corps of Engineers Europe District / Wikimedia Commons

 アメリカのドナルド・トランプ大統領がドイツにおけるアメリカ軍の配備を縮小すると公約したことで、欧州におけるアメリカの役割に新たな注目が集まっている。

 欧州大陸には通常8万人から10万人の部隊が駐留しており、そのうち3万6000人以上がドイツにいる。アメリカ国防総省は1日、ドイツから5000人の部隊を撤退させると発表し、トランプ氏はその翌日、それよりも「はるかに大きく踏み込む」と述べた。

 アメリカ軍の駐留は、アメリカが欧州の安定化と再建を支援した第二次世界大戦と、部隊がソ連の拡張に対する防波堤として機能した冷戦に起源を持つ。近年では、この配備は北極圏やアフリカ、中東(現在のイランとの紛争を含む)での作戦を支えるうえで重要な役割を果たしてきた。

 しかしトランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)の欧州同盟国を批判し、欧州の安全保障に対するアメリカの関与を縮小するとの脅しを実行に移すことで、長年の超党派の合意から逸脱した。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は先月末、アメリカはイランに「屈辱を受けている」と述べ、ワシントンには明確な戦略が欠けていると批判した。今回の発表は、こうした同首相との緊張が高まる中で行われた。

 現在の欧州におけるアメリカの配備状況と、今後の変化を概観する。

◆欧州におけるアメリカの防衛態勢
 1947年に創設され、EUCOMとして知られるアメリカ欧州軍は、国防総省に属する11の統合軍の1つで、約50の国と地域を管轄している。

 国防総省の12月時点のデータによれば、ドイツに3万6000人以上が駐留しているほか、イタリアには1万2000人以上、イギリスにはさらに約1万人が駐留している。

 国防総省は、1日に発表した削減について、どの部隊や作戦が影響を受けるかについてはほとんど詳細を明らかにしていない。

 アメリカは、ロシアがウクライナに対する全面侵攻を開始した4年前以降、欧州への配備を増強してきた。ドイツなどのNATO同盟国は、これらの部隊が最初に撤退する可能性が高いと1年以上前から見込んでいた。

◆欧州配備が果たす世界的役割
 ロシアに対する抑止力としての役割に加え、欧州におけるアメリカ軍の存在は、ワシントンが世界各地に戦力を投射するうえでの基盤となっている。

 アメリカ軍およびNATO軍の欧州における司令官を兼ねるアレクサス・グリンケウィッチ大将は3月、上院軍事委員会で、欧州に強固なプレゼンスを維持する利点を強調した。

 「欧州に能力と弾薬を配備していることで、アメリカ・アフリカ軍がアフリカのテロリストを標的とするのを支援したり、アメリカ中央軍が『エピック・フューリー作戦』を実行するのを支援したりできる」と同大将はイラン戦争に言及しつつ議員らに語った。「距離は短く、費用も抑えられ、戦力投射ははるかに容易になる」

 ドイツには、アメリカ欧州軍およびアフリカ軍の司令部、ラムシュタイン空軍基地、さらにアフガニスタンやイラクでの戦争による負傷者が治療を受けたランツトゥールの医療センターがある。アメリカの核兵器も同国に配備されている。

 アメリカ科学者連盟による3月の推計によれば、アメリカは欧州の基地に約100発の核爆弾を配備しており、これらは航空機で運搬される。同団体の報告書は、爆弾はベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの基地にあり、イギリスの基地にも存在する可能性があるとしている。

◆欧州東方への再配置を求める声
 2日に記者団に語ったトランプ氏の発言以前から、議会の両軍事委員会の共和党トップは国防総省の計画に懸念を示し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナでの戦争を継続する中、欧州での時期尚早な削減は「誤ったシグナル」を送ることになると警告していた。

 ミシシッピ州選出のロジャー・ウィッカー上院議員とアラバマ州選出のマイク・ロジャース下院議員は、部隊は撤退させるのではなく、東欧の基地へ移すべきだと述べた。

 両議員はまた、同盟国が「アメリカ軍を受け入れるために多大な投資」を行ってきたとも指摘した。

 ウィッカー氏とロジャース氏によれば、国防総省は1日の発表に続き、地上発射型ミサイルシステムを運用するアメリカ陸軍の長距離火力大隊の1つをドイツに配備する計画を中止することも決定したという。

◆トランプ氏の構想:欧州の自主防衛
 1月に発表された「国家防衛戦略」は、中国の抑止やサイバー攻撃への防御、イランの核開発阻止に至るまで幅広い方針を示した文書であり、その一環として政権は欧州が自らの防衛により大きな責任を負う必要があるとした。

 「我々は欧州に関与し続けるが、アメリカ本土の防衛と中国の抑止を優先しなければならず、今後もそうする方針だ」と同文書は記している。

 同文書はまた、欧州の経済力は世界的に見て相対的に低下しているものの依然として大きく、ドイツの経済規模だけでも「ロシアを大きく上回る」と指摘した。

 「幸いにも、我々のNATO同盟国はロシアよりもはるかに強力であり、その差は歴然としている」と同文書は述べ、トランプ氏が主導した国防費を国内総生産(GDP)比で合計5%に引き上げるというNATO同盟国の最近のコミットメントにも言及した。

◆ドイツの軍備強化の動き
 ドイツは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、長年手薄とされてきた自国軍(ドイツ連邦軍)の近代化を進めている。同年にはドイツ連邦軍強化のため1000億ユーロ(18兆円)の特別基金を設立し、その多くが新装備の調達に充てられている。

 昨年末、メルツ首相率いる政権は兵員数を約18万人から26万人へと増員する計画を発表した。徴兵制が存在した2001年には兵員数は30万人で、その3分の1以上が徴集兵だった。

 ベルリンはまた、現在の2倍以上となる約20万人の予備役が必要になるとしている。

 ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、1日に国防総省の削減計画が発表された後、ドイツ通信社(dpa)に対し、欧州が自らの安全保障により大きな責任を負う必要があると認めたうえで、ドイツ連邦軍は拡大しており、装備調達は加速し、インフラ整備も進んでいると述べた。

By JAMEY KEATEN and BEN FINLEY Associated Press

Text by AP