分析:イラン戦争2週間、揺らぐトランプの政治基盤
エアフォース・ワンの機内で記者団に語るトランプ氏(15日)|Mark Schiefelbein / AP Photo
アメリカとイスラエルがイランへの攻撃を開始してから2週間、ドナルド・トランプ大統領は政治的に追い込まれつつある。
ニュース報道への苛立ちを強める一方、なぜ戦争を始めたのか、どのように終結させるのかについて、国民に納得のいく説明を示せずにいる。紛争でのアメリカ人の死者や原油価格の急騰、金融市場の下落への懸念が広がり、支持者の一部からも計画を疑問視する声が出始めた。支持率も全体として下落している。
その一方で、ロシアは戦争の初期段階から恩恵を受けている。トランプ氏がロシア産石油の一部輸送に対する制裁を緩和したうえ、原油価格の上昇も重なったためだ。これにより、ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻能力を弱めようとしてきた長年の取り組みは揺らいでいる。
2024年の大統領選でトランプ氏が勝利した後、動揺していた民主党も攻勢に転じ始めた。11月の中間選挙で議会の支配権が争われる中、民主党は結束してトランプ氏のイラン政策に反対し、現在の経済混乱は生活費を下げるという共和党の公約が守られていない証拠だと批判している。
党の支持者に立候補や選挙活動の研修を行うナショナル・デモクラティック・トレーニング・コミッティー(NDTC)のケリー・ディートリッヒCEOは「民主党は11月の中間選挙で有利な立場にあると思う」と語る。ディートリッヒ氏は、この2週間の動きについて「トランプ政権が長期的な計画を欠いていることを示している」と指摘。「彼らは場当たり的に動いており、その代償を払っているのは国民だ」
トランプ氏はフロリダ州の別荘マール・ア・ラーゴで週末を過ごした後、エアフォース・ワンでワシントンに戻る機内で不満をあらわにした。中東の石油に依存する同盟国やその他の国々が、イランへの対抗措置に十分な貢献をしていないと批判。特にイギリスのキア・スターマー首相の名前を挙げ、当初はイギリスの空母を「危険な場所」に派遣することを拒んだと述べた。トランプ氏は「支援が得られるかどうかに関係なく、これだけは言える。我々はこのことを忘れない」と語った。
◆ホルムズ海峡の安全確保へ協力要請
トランプ氏は週末の多くをフロリダ州ウェストパームビーチのゴルフクラブで過ごした。14日の夜にはマール・ア・ラーゴで、自身のスーパーPAC(政治資金団体)「MAGA Inc.」の非公開資金集めパーティーにも出席した。
先週末には、イラン戦争で死亡した6人のアメリカ兵の遺体収容式に立ち会った翌日、南フロリダにある別の所有地でゴルフをした。ある政治活動委員会はこの厳粛な式典の写真を資金集めのメールに使用したが、トランプ氏はその是非を問う質問を退け、「私ほど軍を大切にしている人間はいない」と語った。
トランプ氏とホワイトハウスは、紛争に関するメディア報道への不満も強めている。14日には、報道機関が「方針を修正」しなければ放送免許を取り消す可能性があると警告した放送規制当局の対応を称賛した。
大統領はエアフォース・ワンに同乗していた記者団に対し、戦争報道がイランのプロパガンダの影響を受けていると強く批判した。そのプロパガンダは、イラン指導部の軍事力や政治力、さらに国民の支持を誇張しているという。
イラン攻撃の計画についてイスラエル以外の同盟国に事前に知らせていなかったトランプ氏だが、週末には、ホルムズ海峡を通過するタンカーの航行を確保するため国際社会の協力が必要になるとの認識を示した。同海峡では輸送が深刻に乱れ、世界のエネルギー市場にも混乱が広がっている。
イランはエネルギー関連インフラへの攻撃を続けると表明し、海峡の実質的な封鎖をアメリカとイスラエルに対する交渉材料として利用する考えを示している。世界で取引される石油の約5分の1がこの航路を通過する。
トランプ氏は、海峡の再開に向けた軍事支援について「およそ7カ国」と協議していると明らかにした。ただし具体的な国名は示さず、連合がいつ形成されるかについても言及しなかった。「これは我々のためではなく、むしろそれらの国々にとって必要なことだ」とトランプ氏は述べ、「他国が加わるのは良いことだと思う」と語った。
ヨーロッパの同盟国にも言及し、「我々は常に北大西洋条約機構(NATO)のために行動している」と強調。「これほど小さな取り組みに協力しない国がどこなのか、興味深いところだ」と述べた。「各国には参加し、自国の利益を守るよう強く求めている」
ただ、これまでのところ各国の反応は慎重だ。
韓国はトランプ氏の発言について「緊密に調整し、慎重に検討する」としており、日本も状況を注視している。イギリス国防省は「地域の船舶の安全確保に向け、同盟国やパートナーとさまざまな選択肢を協議している」と述べた。
在ワシントン中国大使館の報道官は、海峡を「安全で安定した状態に保つことは国際社会の共通の利益にかなう」と述べ、「中東諸国の誠実な友人であり戦略的パートナーとして、中国は関係各方面との対話を引き続き強化する」と語った。今月下旬に北京を訪問する予定のトランプ氏は、中国がこの取り組みに参加するかどうかについては言及を避けた。
トランプ氏は開戦当初、アメリカ海軍の艦船がタンカーを護衛すると約束していた。しかし、それはまだ実現していない。
その一方で、ホルムズ海峡をめぐる不透明な状況は、トランプ氏が最近ケンタッキー州の集会で語った「我々は勝利した」という発言の信頼性を揺るがしている。トランプ氏は「勝利を早く言いすぎるのはよくないが、我々は勝った。最初の1時間で勝負はついていた」と述べている。
◆戦争がもたらす政治的波紋
アメリカ財務省は先週、ロシアに対する制裁の一部を30日間猶予すると発表した。イラン戦争による供給不足を緩和するため、海上で足止めされているロシア産石油の貨物を市場に出すことを狙った措置だ。
ペルシャ湾の生産停止で原油価格が急騰し、ロシア経済に恩恵をもたらしていると指摘されている中での決定となった。ロシアはウクライナ戦争の資金を石油収入に大きく依存しており、制裁は大きな打撃となっていた。
アメリカの主要同盟国の一部は、この措置がプーチン氏を利するものだと批判している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は制裁緩和について「正しい決断ではない」とし、「ロシアの立場を強め、平和には決して役立たない」と述べた。
中間選挙の戦いが本格化する中、トランプ氏は15日夜、ガソリン価格の急騰が有権者に与える政治的影響について問われ、「政治的に懸念があるのは確かだが、私は正しいことをしなければならない」と語った。「原油価格への影響を数週間避けたいからといって、イランに核兵器を持たせるわけにはいかない」
クリス・ライト・エネルギー長官はNBCの番組『ミート・ザ・プレス』でエネルギー価格の上昇について、「アメリカ国民はすでにその影響を感じており、あと数週間は続くだろう」と述べた。
イラン情勢は、トランプ氏の支持基盤である「MAGA(アメリカを再び偉大に)」の内部でも亀裂を生んでいる。軍事行動を支持する層と、トランプ氏は戦争終結を公約に掲げていたはずだと主張する層に分かれている。
こうした政治的混乱を受け、民主党内ではトランプ政権1期目の2018年に起きた「ブルー・ウェーブ(青い波)」に匹敵する議席増を中間選挙で達成できるとの見方も出ている。
民主党の戦略家ブラッド・バノン氏はトランプ氏について、「民主党は、彼が物価を下げると約束したにもかかわらず実際には上がり続けていることを国民に思い出させればいい」と述べた。「ガソリン価格の上昇は食料品を含むあらゆる商品の価格を押し上げるため、今後さらに上昇するだろう」
By WILL WEISSERT Associated Press




