マドゥロ氏の刑事裁判、今後の焦点は 保釈、資金問題、主権免責

StringerAL / Shutterstock.com

 ニコラス・マドゥロ氏がアメリカで初めて出廷した法廷で、自らを今なおベネズエラ大統領だと主張した。この場面は注目を集めたが、今後は数年、場合によっては生涯にわたり拘束され、政権に復帰できない事態も想定されている。

 マドゥロ氏と妻のシリア・フローレス氏は、麻薬密輸などの罪で起訴され、5日に罪状認否を受けた。2人は数日前、米軍が深夜にカラカスの自宅を急襲し、身柄を拘束した。2人とも無罪を主張している。

 ドナルド・トランプ大統領の政権は、この作戦について「精密な法執行のための軍事行動」だと説明している。一方、法廷でマドゥロ氏は、これは誘拐に当たると述べ、自らを戦争捕虜だと位置づけた。

 ベネズエラ国内外で地政学的な波紋が広がる中、マドゥロ氏夫妻はニューヨーク市内の連邦拘置施設に収容されている。次回の出廷は3月17日に予定されている。

◆保釈の可能性は低い
 マドゥロ氏(63)とフローレス氏(69)は、保釈を求めることは可能だが、実現の可能性は低いとみられている。5日の法廷では申し立ては行われなかったものの、弁護側は将来的に検討する可能性を示唆した。

 担当のアルビン・ヘラースタイン判事は、保釈の申し立てについて「いつでも、適切だと思う頻度で受け付ける」と述べた。ただし、保釈を認めるかどうかは別問題だ。

 2人は終身刑の可能性がある重大な罪で起訴されており、検察は逃亡のおそれが高いと主張するとみられる。マドゥロ氏は麻薬テロ共謀の罪で訴追され、夫妻はコカインをアメリカに密輸する共謀や、機関銃の所持でも起訴されている。

 同様の事件で保釈が認められる例はまれだ。1989年にアメリカが侵攻して拘束したパナマのマヌエル・ノリエガ元指導者も、麻薬密輸容疑で保釈は認められなかった。ホンジュラスのフアン・オルランド・エルナンデス元大統領や、麻薬王として知られるホアキン・グスマン(通称エル・チャポ)の事件でも、保釈は求められなかった。

◆フローレス氏の負傷と医療対応
 フローレス氏の弁護士は、拘束時に「重大な負傷」を負ったと明らかにした。肋骨に骨折や重度の打撲の可能性があり、X線検査などの医療評価が必要だという。フローレス氏は、額やこめかみ、まぶたに包帯を巻いて法廷に出廷した。

 マドゥロ氏の弁護士も、本人に拘束中の対応を要する健康上の問題があると述べたが、詳細は明らかにしなかった。判事は、2人が適切な医療を受けられるよう、検察と弁護側が協力するよう指示した。

 2人が収容されているメトロポリタン・デテンション・センターには医療部門があるが、過去にはがんの見落とし診断など、医療対応の不備が指摘されている。

◆領事面会と資金問題
 アメリカで起訴された外国籍の被告には、母国の領事当局者と面会する権利がある。マドゥロ氏は通訳を通じ、夫妻ともに領事面会を希望していると述べた。

 ただし、2019年にマドゥロ氏自身がアメリカのベネズエラ大使館と領事館の閉鎖を命じており、実際にどのような支援が受けられるかは不透明だ。AP通信は、国連にあるベネズエラ代表部にコメントを求めている。

 領事面会は、弁護費用の確保という点でも重要になる可能性がある。マドゥロ氏夫妻は長年、アメリカの制裁対象となっており、米財務省の許可がなければ、アメリカ人が夫妻から金銭を受け取ることはできない。このため、弁護費用の支払いを含め、裁判対応に支障が出る可能性も指摘されている。

 判事は検察に対し、弁護側が依頼人を十分に代理できるよう調整するよう求めた。マドゥロ氏は6日、レーガン政権で米司法省副次官補を務めた憲法・国際法専門家のブルース・ファイン氏を弁護団に加えた。

◆起訴の適法性をめぐる争い
 マドゥロ氏側は、起訴そのものの正当性について「重大な」法的争いを行う構えだ。弁護側は、マドゥロ氏が主権国家の元首であり、職務に伴う特権や免責を受けるべきだと主張している。また、軍による身柄拘束の適法性も争点になるという。

 1989年に拘束されたノリエガ氏についても、弁護側は元首免責を主張したが、ノリエガ氏が正式な大統領の肩書きを持っていなかったことなどを理由に退けられた。

 マドゥロ氏は3回の選挙で勝利したと主張しているが、アメリカは長年にわたり正当な指導者として認めておらず、主権免責の対象にはならないとの立場だ。

 この点をめぐる法廷闘争は長期化し、最終的に控訴審まで持ち込まれる可能性がある。

By MICHAEL R. SISAK and LARRY NEUMEISTER

Text by AP