ロシアの情報戦に備え、3歳からメディア・リテラシー教育 フィンランド
メディア・リテラシーの授業で課題に取り組む10歳の学生、フィンランド・タパニラ(2025年12月9日)|
James Brooks / AP Photo
フィンランドでは、フェイクニュースや偽情報への対策が就学前教育から始まっている。3歳の子供でも、メディアを読み解く力を育てる教育を受けている。
この北欧の国では、異なる種類のメディアを分析し、虚偽情報やプロパガンダを見抜く能力を含むメディア・リテラシーを、数十年前から国家カリキュラムに組み込んできた。対象は幼児から学生まで幅広く、こうした教育は、国民が偽情報に流されにくくなるための包括的な対策の一環だ。特に、国境を1340キロにわたって接するロシアから流入する情報への警戒が背景にある。
近年は、人工知能(AI)に関する理解も新たに重視されている。ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めて以降、ヨーロッパ全体で偽情報キャンペーンが強まったとされ、教育現場でも対応が急がれている。2023年にフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟したことも、ロシアとの緊張を高める要因となった。ロシア側は他国の内政に干渉していないと否定している。
ヘルシンキ市で教育を担当するキイア・ハッカラ氏は「メディア・リテラシーは極めて重要な市民的能力だ。国家の安全、そして民主主義を守るうえでも欠かせない」と話す。
◆小学生はフェイクニュースの見分け方を学ぶ
ヘルシンキ北部にあるタパニラ小学校では、4年生の授業でフェイクニュースの見分け方が教えられている。教室の画面に「事実か虚構か」と表示され、生徒たちが内容を検討する。
10歳の生徒イロ・リンドグレンは「少し難しい」と率直に語った。
教師で副校長のヴィレ・ヴァンハネン氏によると、生徒たちは見出しや短い記事を読むことから始め、長年にわたって偽情報について学んできた。最近の授業では、オンラインニュースが信頼できるかどうか判断するためのポイントを五つ挙げる課題に取り組んだという。現在は、画像や動画がAIで生成されたものかどうかを見抜く方法も学んでいる。
「AIが作った画像や映像をどう見分けるかも重要なテーマになっている」とヴァンハネン氏は話す。
◆メディアも教育に参加
学校教育だけでなく、国内メディアもメディア・リテラシー教育に関わっている。フィンランドでは毎年「新聞週間」が実施され、新聞やニュースが子供や若者に届けられる。
2024年には、ヘルシンキを拠点とする日刊紙ヘルシンキ・サノマットが「メディア・リテラシーのABCブック」を制作し、後期中等教育に進学する全国の15歳全員に配布した。
同紙の編集責任者ユッシ・プリネン氏は「検証され、信頼でき、誰が作っているかが分かる情報源であることが重要だ」と語る。
◆偽情報が民主主義を揺さぶる
フィンランドでは1990年代からメディア・リテラシーが教育課程に含まれており、高齢者向けの講座も用意されている。こうした取り組みは社会に深く根付き、人口560万人の同国は、ヨーロッパ・メディア・リテラシー指数で常に上位に位置してきた。この指数は、ブルガリア・ソフィアに拠点を置くオープン・ソサエティ・インスティテュートが2017年から2023年にかけてまとめた。
アンデルス・アドラークロイツ教育相は「世界がここまで偽情報にあふれ、民主主義そのものが脅かされる状況になるとは想像していなかった」と述べる。
AI技術の進歩により、真実と虚偽を見分けることはさらに難しくなっている。欧州ハイブリッド脅威対策センターのマーサ・ターンブル氏は「現時点では、AIが作った偽物は品質に限界があり、まだ見抜きやすい。しかし技術が進化し、より高度なAIが使われるようになれば、識別は格段に困難になる」と警鐘を鳴らしている。
By JAMES BROOKS




