マドゥロ氏起訴の背景 コカインと腐敗の構図
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(2023年4月20日)|StringerAL / Shutterstock.com
アメリカ司法省は、公開した起訴状で、拘束されたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、アメリカに数千トン規模のコカインを流入させた大規模な麻薬密輸網を背景に、腐敗した正統性のない政権を運営してきたと指摘した。
3日未明、ベネズエラで行われた軍事作戦により、マドゥロ氏と妻のシリア・フローレス氏が拘束された。石油資源に富む南米国家を長年率いてきたマドゥロ氏を、ニューヨークの連邦裁判所で有罪に持ち込めるかどうか。アメリカの検察にとって、大きな試金石となる。
アメリカ司法長官のパム・ボンディはXへの投稿で、マドゥロ氏とフローレス氏は「まもなく、アメリカの司法を、アメリカの地で、アメリカの裁判所で全面的に受けることになる」と述べた。
◆麻薬と武器を巡る罪状
マドゥロ氏は、妻と息子、さらに3人とともに起訴された。罪状は4件で、麻薬テロ共謀、コカイン輸入共謀、機関銃および破壊装置の所持、機関銃および破壊装置の所持に関する共謀とされている。
これらは、第一次トランプ政権下の2020年に、マンハッタンの連邦裁判所で起訴された際と同じ内容だ。今回公開された起訴状は、フローレス氏に対する新たな容疑を加えたもので、クリスマス直前にニューヨーク南部地区の連邦裁判所に提出されていた。
マドゥロ氏は5日に、マンハッタンの連邦裁判所で初出廷する予定だ。ホワイトハウスの公式アカウントが3日夜に公開した動画には、マドゥロ氏が笑顔を浮かべ、両腕を連邦捜査官に押さえられながら、ニューヨーク市内のアメリカ麻薬取締局(DEA)の施設内を移動する様子が映っていた。裁判を待つ間、ブルックリンの連邦拘置施設に収容される見通しだという。
◆コカインに支えられた腐敗
司法省は、マドゥロ氏が「世界でも最も暴力的で活動規模の大きい麻薬密売人や麻薬テロリスト」と手を組み、数千トンのコカインがアメリカに流れ込むのを可能にしたと指摘している。
アメリカ当局によると、シナロア・カルテルやトレン・デ・アラグアといった強力で暴力的な犯罪組織が、ベネズエラ政府と直接関係を持ち、見返りとして、彼らを支援し保護した政府高官に利益を還流させていたという。
一方で、昨年4月に公表されたアメリカの情報評価では、情報機関共同体を構成する18機関の分析を基に、トレン・デ・アラグアとベネズエラ政府の間に組織的な連携は確認されなかったとしている。
それでも司法省は、マドゥロ氏が自身や政権幹部、さらに家族の利益のために、コカイン取引に根ざした腐敗が広がるのを許してきたとみている。
起訴状によると、マドゥロ氏一家は、地域全体で麻薬を移動させるカルテルに対し、法執行機関による事実上の庇護や兵站面での支援を提供していた。その結果、2020年までに、年間最大250トンのコカインがベネズエラを経由して密輸されていたという。
麻薬は高速艇や漁船、コンテナ船、あるいは秘密の滑走路から航空機で運ばれていたとされる。
司法省は、こうした麻薬取引に基づく腐敗の連鎖が、ベネズエラ当局者とその家族を富ませる一方で、同国領内で事実上野放しに活動する暴力的な麻薬テロリストにも利益をもたらし、アメリカ向けに大量のコカインを生産、保護、輸送することを可能にしてきたと指摘している。
歴代のアメリカ政権は、ベネズエラがコカイン密輸の中継地であり、犯罪組織やテロ組織、さらに隣国コロンビアの左翼系武装勢力の温床になっていると警告してきた。正確な統計を把握するのは難しいものの、コカインの大半はコロンビアやエクアドルを出発し、カリブ海ではなく東太平洋ルートを通って北上しているとされる。
◆誘拐や殺害の指示も
アメリカ当局は、マドゥロ氏と妻が、麻薬取引の代金を支払わなかった者や、密輸網を妨害した者に対し、誘拐や暴行、殺害を命じたとみている。起訴状には、首都カラカスで地元の麻薬ボスが殺害された事件も含まれている。
フローレス氏については、2007年に「大規模な麻薬密売人」と、ベネズエラ国家麻薬対策局の局長との面会を取り持つ見返りとして、数十万ドルの賄賂を受け取った疑いが持たれている。この取引では、密売人が局長に対し、月額の賄賂に加え、コカインを積んだ航空便1便ごとに約10万ドルを支払い、安全な通過を確保することに同意していたという。その一部はフローレス氏に渡っていたとされる。
また2015年には、フローレス氏のおい2人が、アメリカ政府の秘密情報源との録音された会合で、ベネズエラの空港にあるマドゥロ氏の大統領専用機の格納庫から、数百キログラム単位のコカインを出荷する計画を語っていたという。2人はその場で、自分たちはアメリカと「戦争状態」にあるとも述べていたとされる。
おい2人は、アメリカへの大量のコカイン密輸を企てた罪で、2017年にそれぞれ禁錮18年の判決を受けた。その後、収監されていたアメリカ人7人との受刑者交換の一環として、2022年に釈放されている。
◆「法執行としての作戦」
記者会見で、マルコ・ルビオ国務長官と、統合参謀本部議長のダン・ケインは、マドゥロ氏夫妻を拘束した軍事作戦について、司法省の要請に基づくものだったと説明した。ケイン氏は、この作戦が司法省の要請で実施されたと明らかにした。
ルビオ氏は、議会に事前通知があったかどうかを問われ、この作戦は「基本的に法執行の一環だ」と説明し、「司法省を支援する形で軍が関与した」と述べた。さらにマドゥロ氏について、「5000万ドルの懸賞金が懸けられた、アメリカ司法の逃亡者だ」と語った。
By ALANNA DURKIN RICHER and LARRY NEUMEISTER




