北朝鮮、原子力潜水艦建造が最終段階か 船体全体像を初公開
北朝鮮政府が配信した、建造中の原子力潜水艦を視察する金総書記の画像、日付不明|Korean Central News Agency/Korea News Service via AP
北朝鮮は25日、原子力潜水艦の建造が進展していることをうかがわせた。国営メディアが公開した写真には、船体が大部分完成したように見える様子が写っており、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、ライバルである韓国が同様の技術取得を進めていることを非難した。
北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)によると、金総書記は造船所を訪れ、北朝鮮が「8700トン級の原子力推進潜水艦」と呼ぶ艦の建造状況を視察したという。金総書記はこれを、北朝鮮海軍の近代化と核武装に向けた重要な一歩だとしてきた。北朝鮮は、この潜水艦に核兵器を搭載する計画を示しており、「戦略誘導ミサイル潜水艦」または「戦略核攻撃潜水艦」と称している。
視察の場で金総書記は、韓国が自国の原子力潜水艦取得を目指す動きについて、アメリカのドナルド・トランプ大統領が支持していることに触れつつ、北朝鮮の安全保障と海洋主権を重大に侵害する「攻勢的行為」だと述べた。
さらに、韓国の計画は北朝鮮海軍の発展と核武装を進める必要性をいっそう浮き彫りにするとし、自国の原子力潜水艦が完成すれば、いわゆる敵の脅威に対する核戦争抑止力を強化するうえで「画期的」な変化になると主張した。
KCNAは金総書記がいつ造船所を訪れたかは明らかにしなかったが、公開された写真では、金総書記が高官や娘を伴い、組立工場の内部で建造中の巨大なえんじ色の艦艇を点検している様子が写っていた。艦体には防食塗料のようなものが塗られているように見える。北朝鮮の国営メディアがこの潜水艦の画像を公開したのは、3月以来初めてで、当時は主に艦の下部が示されていた。
北朝鮮がこの艦の完成にどれほど近いのかは、現時点では明確ではない。ただし、潜水艦は通常内側から外側へと組み上げていくため、外板を含む船体がほぼ完成したように見える画像の公開は、エンジンや場合によっては原子炉など中核部品がすでに搭載されている可能性を示す、とソウルの漢陽大学の潜水艦専門家ムン・グンシク氏は指摘した。
「いま艦全体を見せたのは、装備の大半がすでに取り付けられていて、あとは進水させる段階に近いことを示しているように見える」とムン氏は述べた。韓国海軍の元潜水艦将校でもあるムン氏は、北朝鮮の潜水艦が数カ月以内に海上試験を実施する可能性もあるとみている。
◆原子力潜水艦は金正恩の次の主要な軍事目標
原子力潜水艦は、金総書記が2021年の大規模な政治会議で発表した「高度兵器の長い希望リスト」の一つだった。金総書記は、アメリカ主導の軍事的脅威が拡大しているとして、それに対処するためだと説明していた。他の項目には、固体燃料式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、極超音速兵器、偵察衛星、多弾頭ミサイルが含まれていた。
北朝鮮はこれらの一部を開発するため、一連の試験を実施してきた。また最近では新型の海軍駆逐艦を公開し、金総書記はこれを、核戦力の作戦行動範囲と先制攻撃能力を拡大するうえでの大きな一歩だと称賛した。
長期間にわたり秘匿性を保って行動でき、水中からミサイルを発射できる潜水艦を北朝鮮が手にすれば、近隣諸国にとって懸念すべき展開になる。水中発射は事前探知が難しいためだ。一方で、厳しい制裁下にあり貧しい北朝鮮が、原子力潜水艦を建造するための資源や技術を確保できるのかを疑問視する声もある。
一部の専門家は、北朝鮮が近年ロシアとの関係を深めていること――ウクライナでのウラジーミル・プーチン大統領の戦争を支援するため、数千人の兵士や軍装備を送っていることを含む――が、見返りとして重要技術を受け取る助けになった可能性があるとみている。
北朝鮮がロシアから、退役したロシア潜水艦のものを含む原子炉の提供を求めたのではないかと疑う分析もあるが、ムン氏は、北朝鮮が自前で原子炉を設計した可能性が高いとしつつ、ロシアから何らかの技術的支援を受けた可能性はあると述べた。
◆韓国も自国の原子力潜水艦を目指す
11月にトランプ大統領と行った首脳会談で、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は、原子力潜水艦取得に向けた韓国の取り組みへのアメリカの支援を求めた一方、防衛費を増やしてアメリカの負担を軽減する考えも改めて表明した。
その後トランプ大統領は、韓国が原子力潜水艦を建造できるよう、厳重に管理されてきた技術の共有にアメリカは前向きだと述べた。ただし、その艦がいつどこで建造されるのか、そして韓国が必要な核燃料や原子炉技術をどのように確保するのかは、現時点では明確ではない。
別の報道でKCNAは、金総書記が24日に新型の対空ミサイルを海上に向けて発射する試験を監督したとも伝えた。これに対し韓国軍合同参謀本部は、その後、東海岸の町から北朝鮮が複数のミサイルを発射したのを探知し、韓国とアメリカの情報当局が兵器の詳細を分析していると述べた。
朝鮮半島の緊張は近年悪化している。金総書記が軍事核開発を加速させ、ロシアのウクライナ侵攻後にモスクワとの連携を深めたためだ。北朝鮮政府は、核・ミサイル計画の縮小を目的とする交渉を再開しようというアメリカ政府と韓国政府の呼びかけを繰り返し退けてきた。交渉は、トランプ大統領の第1期政権中の首脳会談が決裂した2019年以降、停滞したままだ。




