中国の最新鋭空母はいかに西側の海洋支配に挑むのか

Pu Haiyang / Xinhua via AP

著:Basil Germondランカスター大学、Professor of International Security, School of Global Affairs)

 中国の新型空母「福建」は、最近、習近平国家主席によって大々的に披露されたが、同国の海軍近代化計画における大きな節目であり、中国が海洋強国になることを目指すうえでの重要な進展だと中国の国営メディアから称賛されている。

 北京が一貫して追求してきた海洋権力戦略という文脈では、世界の海洋秩序の安全保障とその主導権にとって、長期的な影響は間違いなく大きく、かつ持続的なものになる。

 今回の就役によって、中国は運用中の空母を3隻保有し、海上で空母戦力を継続的に展開できるようになった。また、中国の4隻目の空母の建造がすでに始まっていることを示唆する衛星画像が報じられている。

 これにより北京は、自ら重要だとみなす遠隔地に軍艦を予防的に配備する能力を高める。さらに、中国は空母打撃群が行動する海域の制空権を掌握し、より遠方の紛争地域へ航空戦力を投射する潜在力を手にすることになる。

 この新型空母はまた、中国が、早期警戒機や、より多くの燃料と兵装を搭載できる戦闘機などのより大型で特殊な航空機を発艦させられることも意味する。

 これによって北京の作戦上の選択肢は拡大する。中国は、海から大きな戦略的優位を生み出す能力を備えた空母打撃群を、自立して運用できる4か国(アメリカ、イギリス、フランス、中国)という限られたグループの一員へと加わることになる。

 しかし、このグループの中でもアメリカは依然として大きく先行している。空母艦隊の規模、技術の高度さ、運用経験、世界的な展開能力、継続的な空母打撃能力といった点で、アメリカは大きなリードを保っている。

 空母は、いわゆる「ブルーウォーター交戦」と呼ばれる、公海上での同程度の力を持つ国家同士の対立において、言うまでもなく重要な海軍資産だ。同時に、特に制空権を通じて海上の戦闘空間を掌握し、沿岸の陸上にまで軍事力を投射するうえでも重要な存在だ。

 「福建」が世界の勢力均衡を劇的に中国有利へ傾けるわけではない。だが、強化された対地攻撃能力は、北京の作戦上の道具立てを広げ、より柔軟で強気な海軍戦略を可能にする。

◆強い象徴的な力
 第二次世界大戦以降、空母は戦艦に代わって「主力艦」となってきた。主力艦とは、艦隊の中核を成し、決定的な戦闘力を発揮するよう設計された、その国で最も強力な軍艦を指す。

 このような主力艦は強い象徴性を帯びている。その存在は、こうした複雑なプラットフォームを調達し、維持し、運用するために必要な資源を動員できる国家の能力と、外洋海軍大国として機能しようとする意思を示すものでもある。

 そうした観点から見ると、中国の空母計画はかなり大きな象徴的意味合いを持つ。これは、北京が本来的に持つ海軍能力と、国際的な「序列」の中で高まりつつある地位という、外向きの権力の双方を映し出している。

◆中国の包括的な海洋権力戦略
 中国の空母計画は、北京がより広範に展開している海洋権力戦略の一部として理解する必要がある。ロシアやイランなど他の権威主義国家と異なり、中国の体制の権力基盤は国際貿易、ひいては航行の自由に、はるかに強く依存している。そのため、中国は世界の海洋秩序を混乱させようとしているわけではない。それを主導し、新たな世界的覇権のサイクルを始動させようとしているのだ。

 そのために北京は、海軍力だけでなく、おそらくそれ以上に重要な民間の海上権力も拡大している。そこには、強力な造船業や、中国籍として登録された巨大で成長を続ける商船隊が含まれる。さらに、中国は港湾など、西側の重要インフラへの多額の直接投資も行ってきた。

 こうした投資の多くは、国家と緊密な関係を維持する中国の民間企業を通じて行われている。これにより北京は、民間の海上権力を政治的利益のために行使する際の追加的なテコを得ている。たとえば、中国の海運会社を使ってロシアへの西側制裁を回避したり、中国企業が所有する欧州の港湾に介入したりすることができる。

 南シナ海では、北京は経済的または戦略的に重要だとみなす係争海域に対して一定の支配権を確立するため、沿岸警備隊や海軍の後ろ盾を得た漁船団を積極的に活用している。

 したがって、「福建」の就役は中国海軍にとって単なる技術的節目以上の意味を持つ。それは意図の表明でもあり、中国が海洋領域のあり方を左右しようとする能力と意思を高めていることを裏づけるものだ。より広い海洋権力戦略の一環として、それは、中国が世界の海洋秩序に単に関与するだけでなく、その主導権を握ろうとする北京の野心を示している。

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Translated by NewSphere newsroom

The Conversation

Text by Basil Germond