フィリピンの漁師、中国由来の水中ドローン相次ぎ発見 潜水艦運用に利用か

画像:フィリピン沿岸警備隊(PCG)

 フィリピンの漁師が各地で中国由来の可能性がある水中ドローンを相次いで見つけている。フィリピン沿岸警備隊(PCG)は2022年7月以降に少なくとも6件を確認しており、直近ではパラワン州リナパカン沖で地元漁師が回収し、PCGに引き渡した。違法な海洋科学調査の疑いを含め、組織的活動への懸念が高まっている。

◆漁師が発見した最新の水中ドローン
 フィリピン情報庁の発表によると、リナパカンの漁師が9月28日、約12フィート(約3.7メートル)の装置を海から引き上げ、同日夕方にPCGへ引き渡した。装置はPCGステーション・リナパカンで保管中で、鑑定が進められている。

 装置には海水の塩分濃度、温度、深度を測定するCTDセンサーが搭載されていた。センサーには「海水塩度センサー」を意味する中国語とシリアル番号「CTD-20090334」が記されていた。金属フレームには長期の海水ばく露による腐食が見られ、機首の整流カバーには衝突痕とみられる損傷が確認された。

◆少なくとも6件の類似事例
 同国周辺海域では、同様の水中ドローンの発見が相次いでいる。フィリピン情報庁によると、2022年7月から2024年12月まで、少なくとも5件が確認された。初確認は2022年7月のイロコス・ノルテ州パスーキンで、その後も各地で漁網に絡まった状態で見つかっている。チャイナ・テレコムのSIMカード、北京の防衛関連企業HWAクリエイトと関連付けられたイリジウム送受信機、中国電子科技集団(CETC)の刻印があるバッテリーが確認されており、少なくとも3機が中国による展開に関連付けられている。

 海事専門メディアのマリタイム・エグゼクティブは、発見地点に共通性があると指摘した。多くが南シナ海とスールー海を結ぶ狭隘な海峡の近傍に位置し、東西の海上交通のボトルネックとなる地点だ。さらに、他の中国製ドローンの回収地点も、紛争時の潜水艦の隠密航行に利用されやすい海域が中心で、商船の通行が少ないなど民間利用が限られる場所が目立つと分析している。

◆海況データは潜水艦運用を左右
 フィリピン情報庁によれば、CTDセンサーは塩分・温度・深度に加え、音の伝搬に関わる海況データを収集できる。海底地形の把握や環境監視に不可欠であると同時に、海水の層状構造(温度・塩分差による層)を解析することで、潜水艦から発する音の伝わり方を予測できる。こうしたデータは、潜水艦の検出回避や対潜戦で優位性をもたらす。

 近年、無人機以外でも中国の活動は警戒対象となっている。USNI News(アメリカ海軍協会のニュースサイト)は、フィリピン情報当局が2025年初めに国内の軍事施設周辺での中国人による監視活動を摘発したと報じた。スービック湾では中国人グループがスパイ容疑で逮捕され、寄港するアメリカ海軍艦艇の写真や到着日を収集していたという。

 軍事目的で多様な情報を収集しているのではないかという懸念は、いっそう強まっている。

画像:フィリピン沿岸警備隊(PCG)

画像:フィリピン沿岸警備隊(PCG)

Text by 青葉やまと