軍事力を増す中国、世界秩序に挑むための“新たな武器”を得る
中国空軍のJ-20ステルス戦闘機|Xiao Wei / Shutterstock.com
著:Tom Harper(イースト・ロンドン大学、Lecturer in International Relations)
中国製の兵器が世界の主要な紛争地帯に姿を見せ始めており、同国の技術進歩と投資の成果が浮き彫りになっている。
1990〜2000年代、中国の兵器システムや軍装備は旧ソ連やロシア製の模倣品と見なされていた。中国は主にモスクワからの輸入に依存し、自前で兵器を製造する能力に欠けていた。
しかし近年の経済発展と技術向上により、中国国営企業は軍事分野で重要な存在となっている。報道によれば、中国は現在、以前よりはるかに高度な兵器システムを保有している。例として、2025年6月にはJ-20戦闘機が対馬海峡をレーダーに探知されずに飛行し、米日韓のレーダー網の射程内に入ったとされる。
ウクライナ戦争を含む近年の紛争ではドローン戦が主流になるなか、中国のドローン技術も高度化している。また極超音速ミサイルやステルス技術の開発でも進展が見られる。
最近の太平洋での動きは中国の軍事力を誇示しており、直近ではオーストラリア沖で事前通告なしに海軍演習を実施。これによりタスマン海上空の航空便に大きな混乱が生じた。艦隊はオーストラリアの敏感な軍事拠点にも接近し、米軍B-2ステルス爆撃機が配備されるアンバーリー基地付近も航行した。この動きは、中国の大胆さが増していること、そして同国の戦力が重要な軍事拠点を射程に収めていることを示している。
◆最新の中国製兵器
6月の印パ紛争では、中国製J-10C戦闘機を用いたパキスタンが、フランス製ラファールを含むインド機を撃墜した。
この戦闘を受け、中国機への関心が高まり、エジプトやナイジェリアがJ-10導入を検討している。前年の中国・珠海エアショーではUAEなど中東各国が中国製兵器を大量購入しており、以前からドローンや戦闘機も購入してきた。
最近ではイランも新たな顧客候補となっており、イラン軍高官が珠海エアショーでJ-10のコックピットに搭乗している姿が撮影された。
中国が軍備に多大な投資を行ってきた歴史には重要な意味がある。中国の軍事的弱点は、湾岸戦争および1996年の第三次台湾海峡危機の際に浮き彫りになった。この危機では、独立へ向かう姿勢を見せていた台北への牽制として、中国は台湾海峡でミサイル試験を実施した。
これに対しワシントンは、2隻の航空母艦と多数の随伴艦からなる2個空母打撃群を派遣した。これらは火力・技術の両面で中国艦を大きく上回っていた。当時の北京はソ連製装備に依存しており、台湾海峡において米潜水艦を探知できなかったことが、中国海軍の限界を際立たせた。
軍備を近代化する必要性から、中国は国防予算を毎年10%ずつ増やし、同時に大規模な軍改革も進めていった。これらは、1989〜2004年に中国共産党中央軍事委員会(中国共産党における最高軍事機構)の主席を務め、1993〜2003年に中国国家主席を務めた江沢民の下で行われた。こうした改革が、今日の中国の近代化された軍事システムの礎を築いた。
◆技術力
軍事近代化は、中国のテクノロジー全般への投資を象徴しており、AIチャットボット「DeepSeek」など一部では西側の優位に挑戦する動きも見られる。
学者たちは「経済力は軍事力と国際的役割の拡大につながる」と古くから主張してきた。
ウクライナや南アジア、中東の戦争で既存の欧州やロシア製兵器の限界が見えるなか、中国製システムにとって販売機会は増えている。とりわけトランプ前大統領の「友好国」リストに入っていない国々、例えばイランなどが顧客になる可能性が高い。もしイランが中国製兵器を装備できれば、イスラエルと互角に渡り合える立場に近づくことになる。
こうした軍事的進歩は中国に自信を与えると同時に、アメリカとその同盟国のアジアでの戦略的立場を揺るがしている。J-20が第一列島線(東アジアの戦略的に重要な島々の連なり)の脆弱性を示した一方、次世代機J-36はこの地域の航空戦のあり方を変える可能性がある。AIと連携したドローン群と統合されることで、「空飛ぶサーバー」として機能する潜在力を持つこのシステムは、最近パキスタンが用いたものに似た統合されたシステムを構築しうるが、その技術はさらに進んでいる。
これらすべての動きは、中国が世界の紛争において重要なプレーヤーとなっていること、そして現行の世界秩序に挑戦し得る力をつけていることを示している。
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Translated by NewSphere newsroom




