ガザ飢餓、「傷は何世代も残る」 専門家、心身の深刻な後遺症に警鐘
寄付された食料を受け取ろうとするパレスチナ人(ガザ市、7月26日)|Abdel Kareem Hana / AP Photo
国連支援の食料安全保障機関は7月29日、ガザ地区で「最悪のシナリオである飢饉」がすでに進行していると警告した。これまでに、子供16人を含む122人が飢餓によって命を落としている。専門家は、飢餓による心理的トラウマが、今後も何世代にもわたってガザの人々を苦しめ続けると懸念を示している。
◆3人に1人が数日間食事をとれず
国連によると、ガザ地区では、食料安全保障レベル分類における飢饉の3つの指標のうち、「食料消費の激減」と「急性栄養失調」という2つの指標がすでに確認されている。世界食糧計画(WFP)のロス・スミス緊急事態担当部長は、「今世紀に入ってこれほど深刻な事態は見たことがない」と述べ、危機の深刻さを強調した。
特に7月中旬以降、5歳未満の子供16人が飢餓によって死亡しており、4月から7月中旬までに2万人以上の子供が急性栄養失調の治療を受けている。
米CNNによれば、ガザ保健省は29日、これまでの総死者数が6万34人に達したと発表した。発表時点から過去24時間だけで113人が死亡し、7月前半に中部および南部ガザで検査を受けた5歳未満の子供5万6000人のうち、約5000人が急性栄養失調とされている。
◆「1時間で解決可能」だが…
海外からもガザの飢餓状況に対する批判の声が上がっている。アメリカのトランプ大統領は29日、「あれは本物の飢餓というものだ」と述べ、ガザに食料センターを設置する計画を明らかにした。飢餓は存在しないと主張するイスラエルのネタニヤフ首相とは対照的な発言である。
タフツ大学世界平和財団のアレックス・デ・ワール事務局長は、トルコ国営のアナドル通信の取材に応じ、イスラエルが食料援助を自在にコントロールできる立場にあると指摘した。たとえば昨年、イスラエルが自国兵士へのポリオ感染を懸念した際には、世界保健機関(WHO)と連携し、わずか数日でガザの子供の95%にワクチンを接種した。
デ・ワール氏は、「もしネタニヤフ首相が『ガザのすべての子供が明日の朝食を食べられるようにする』と言えば、それは現実になる」と語った。国際組織は物理的に1時間以内の距離におり、資源、技術、知識もそろっているにもかかわらず、実際には援助が妨げられていると批判している。
◆何世代にもわたる傷
専門家たちは、飢餓によって生じるトラウマが何世代にもわたって継承されるおそれがあると懸念している。
デ・ワール氏はアナドル通信の取材で、1840年代のアイルランド大飢饉が1世紀以上にわたり癒えない痛みを残したと述べた上で、「ガザの場合、トラウマ、尊厳の喪失、屈辱、人間性の剥奪といった感覚が重なり、この傷は……癒えるのに何世代もかかることになるだろう」と語った。また、1943年のベンガル飢饉の後に起きたコミュニティ間の暴動のように、社会のさらなる崩壊を招く可能性があると警告している。
身体への影響も深刻である。オランダのワーゲニンゲン大学のイングリッド・デ・ズワルテ助教授は、1944〜45年の「飢餓の冬」に起きたオランダの事例を引き合いに出し、当時、栄養失調状態の母親から生まれた子供たちは「糖尿病、肥満、心血管疾患、精神疾患など、さまざまな健康リスクを抱え、若くして死亡する可能性もある」と指摘した(アナドル通信)。
将来の世代に負の遺産を残さないためにも、迅速かつ確実な食料援助の実現が求められている。




