ガザ広域でネット・電話が遮断 人道支援に支障 住民の孤立も深刻化

ガザ市郊外の海岸沿いの道路を移動する避難民(3月21日)|Abdel Kareem Hana / AP Photo

 中央・南部ガザで通信網が途絶し、過去1週間、多くのパレスチナ人が外部との連絡を断たれた状態にある。イスラエルの爆撃が続くなか、支援活動や緊急サービスにさらなる負担がかかっている。

 イスラエル占領下のヨルダン川西岸にある通信規制当局によると、イスラエルの攻撃で主要な通信回線が損傷し、17日以降、ガザの広範囲で通信が途絶えた。通信会社パルテルは20日、南部ガザのハンユニスを含む一部地域でインターネットと固定電話サービスが復旧し、ほかの南部および中部地域でも修復作業が続いていると述べた。

 パルテルはAP通信に対し、主要ネットワークへの攻撃が続けば今後の保守が困難になる恐れがあると警告した。特に必要な資材やリソースが不足しているためだ。

 パレスチナの通信会社パルテルによれば、2023年10月に戦争が始まって以来、ガザ地区では部分的または全面的な通信遮断が少なくとも10回発生している。今週の障害は支援活動や緊急サービスに影響を与え、学業が中断され、避難したパレスチナ人がほかの地域と連絡が取れなくなっている。

 ガザのパレスチナ人は道路の安全が確保されず、燃料不足もあるため携帯電話サービスに大きく依存している。人道支援関係者は、影響を受けた地域の住民は支援情報や医療サービスの情報取得や救急車の要請に苦労すると指摘する。

 「通信は民間人に対する戦争の武器として使われている」と、ガザで主要なサービス提供者である国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の広報局長ジュリエット・トゥーマ氏は語った。

 イスラエル国防軍(IDF)はコメント要請にすぐには応じなかった。

 通信障害の影響を受けた地域で、UNRWA職員の大多数は通信手段を持たず、そのため支援の提供や職員間の調整に苦労しているとトゥーマ氏は語る。「空爆下で屋上に上がるのは非常に危険だが、勇気のあるチームメンバーから時折信号が届き、『生きている』というメッセージを受け取ることがある。それがどれほどの安堵か言い表せない。ただ、そのような通信はだんだん散発的になり、安定しなくなっている」。eSIMに頼る人もいるが、すべての端末に対応しておらず、使用できる地域も限られている。

◆携帯通信の不安定さ
 パレスチナ通信・デジタル経済省の統計(パレスチナ経済政策研究所による引用)によると、2024年8月時点でガザの通信ネットワークの70%以上が部分的または完全に破壊されている。パルテルは技術チームが一部のサービス復旧に向けて技術的な対応を行っていると述べた。

 ノルウェー難民評議会の広報顧問シャイナ・ロー氏は、通信ができないパレスチナ人は近くの爆撃を聞いても避難命令が出ているかどうかや、避難すべき場所がわからないと述べた。「これは人々の孤立を意味する。ガザ内の家族や友人とも連絡が取れず、現状把握や外部ネットワークからの支援を受けることもできない」。また、通信の不安定さにより、救急車や民間防衛チームが命を救うべき人に到達するのが難しくなっているとする。

 パレスチナ医療支援団体(MAP)のガザ地区責任者フィクル・シャルトゥート氏は、被害地域の病院や診療所で働く医師たちが活動内容を記録・共有できないと話した。

◆「常に標的にされている」
 一方、ガザの大学キャンパスは大きな被害を受けており、インターネットが教育を続ける唯一の手段となっている。しかし通信障害により、教育関係者は授業や試験を中止せざるを得なくなっている。

 「この問題は、北部で解決すると南部に問題が現れるという終わりのない悪循環のようだ」と、ガザのアズハル大学で財務・管理担当副学長であり公共法の准教授でもあるモハメド・シュベイル氏は語った。「学生は大学に通えず、インターネットの使えるカフェや避難所にも行けない。これらの場所が今や、イスラエルの攻撃の標的になっている」

 オンラインバンキングも利用できなくなっており、現金不足のなか仕入れ代金の支払いにオンライン送金を使っていたパレスチナ人は現状で支払いができなくなっているとロー氏は指摘した。

 今回の通信障害は人道支援活動をより困難にし、家族が日々直面する「有害なストレス」を増加させているとユニセフの広報官テス・イングラム氏は述べた。「絶え間ない爆撃、食料配布に伴う大量死傷、増加する栄養失調、そして清潔な水の入手が難しくなるなかで、通信はガザの家族にとってまさに命綱だ」

By FATMA KHALED

Text by AP