米中貿易戦争、中国が握る複数の切り札「本気で米に打撃与えるなら…」
Ng Han Guan / AP Photo
トランプ米政権による対中関税の強化に対抗し、中国政府は9日、アメリカからの輸入品に対する関税率を84%に引き上げた。これに反発したトランプ政権は、中国向け関税を125%にまで引き上げた。激化する関税の応酬に、中国側はどのような対抗策を取り得るのか。
◆多角的な報復措置を実施
アメリカが対中関税を引き上げたことを受け、中国は関税以外のさまざまな対抗措置に乗り出した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、中国政府は防衛・航空分野の企業シールドAIやシエラ・ネバダなど6社を取引禁止とした。
また同紙によると、中国政府がアメリカン・フォトニクスやブリンク・ドローンズなど計12社のアメリカ企業に対する輸出規制も新たに打ち出した。こうした一連の措置は明らかに、9日から実施されたアメリカによる104%関税への対抗策だ。
中国は4日、レアアース7種の輸出管理強化を打ち出した。規制対象はサマリウム、ガドリニウム、テルビウムなどで、電気自動車から軍事装備まで、先進的な技術製品の製造に不可欠な素材となっている。
◆中国市場へのアクセス制限を武器に
中国の対応策は単なる関税の枠を超えた広がりを見せている。中国側はアメリカ企業の中国市場への依存度を巧みに利用し、さまざまな圧力を強めている。
中国側の反撃手段は多岐にわたる。WSJによると、レアアースの輸出制限に加え、アメリカ企業を牽制(けんせい)するための法的調査、またアメリカ企業の中国市場参入を妨げるブラックリスト化などが挙げられる。
なかでも、先に挙げたレアアースは大きな切り札だ。中国は世界のレアアース産出量の7割近く、精製能力の約9割を握っている。このことから、こうした貴重な鉱物資源における中国の優位性は長年、国際交渉における重要な材料とされてきた。
◆金融市場への影響
さらに、CNBCによれば、中国がアメリカ国債や住宅ローン担保証券(MBS)を売り払う可能性があるとして、市場で新たな懸念を呼んでいる。
インサイド・モーゲージ・ファイナンスのエグゼクティブチェアを務めるガイ・セカラ氏は同メディアに「中国が本気で我々にダメージを与えようとすれば、アメリカ国債を手放すだろう。これは脅威か? 間違いなくそうだ」と話した。同メディアによると、アメリカ国外の政府は1月末時点で計1兆3200億ドル(約193兆円)のMBSを保有しているおり、これは発行総額の15%に相当する。もし中国が売りを加速させれば、現在上昇している住宅ローン金利はさらに上昇し、住宅市場の冷え込みが予想される。
WSJによると、中国商務省は「アメリカが一方的な姿勢を貫くなら、中国は徹底抗戦する」と表明。アメリカは報復関税を導入しなかった国に対し90日の追加関税停止を発表したが、これに含まれない中国との関税合戦は激化する一方だ。