ウクライナのメリットは不透明…米仲介の「黒海停戦合意」について知っておくべきこと
Mikhail Metzel, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP
3日間の激しい交渉の末、アメリカのトランプ政権、ウクライナ、ロシアは限定的な停戦に合意した。しかし、停戦の対象や開始方法といった重要な詳細については交戦中の両国の間で見解が分かれており、完全な停戦への道のりが長く、対立に満ちたものになることを示している。
今回の交渉は、黒海の海上輸送の円滑化とエネルギー関連施設への長距離攻撃の停止に焦点を当てた。これらは比較的交渉しやすい課題であり、両国とも過去に交渉経験があったため、アメリカが間接的な仲介を行った。
詳細はまだ不明な点が多いが、ここでは今回の部分的な停戦の主要要素と、今後の交渉の行方にかかる重要なポイントを整理する。
◆限定的な停戦は波乱の幕開け
25日の会談直後から、双方の発表が食い違う事態となった。エネルギー施設への攻撃停止の開始時刻について意見が分かれ、互いに停戦違反を非難し合う形となった。
また、ロシアは黒海の海上輸送を再開する条件として、アメリカが制裁を解除することを要求したが、ウクライナ側はこれを一蹴した。
ロシア政府は交渉結果を楽観的に受け止めている一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領は「良いスタート」と評価しつつも、一部のウクライナ当局者は不満を表明している。
ウクライナの国会議員ヤロスラフ・ジェレズニャク氏は、インタファクス・ウクライナ通信に対し「何となく敵に有利な内容ではないかと感じる」とコメントした。
◆黒海の海上輸送ルート周辺での戦闘停止
アメリカは25日、ウクライナとロシアとの個別交渉の中で、黒海での戦闘を停止し、安全な航行を確保するための暫定合意に達したと発表した。
しかし、その詳細は公表されておらず、どのように実施・監視されるのかも不明なままだ。今回の合意は、2022年に国連とトルコが仲介した黒海の安全輸送協定が、ロシアによって2023年7月に破棄されたことを受けての新たな試みとみられる。
ロシア側は、25日に発表された黒海協定の実施には、ロシア農業銀行および食料・肥料取引に関わるほかの金融機関に対する制裁解除と、SWIFT国際決済システムへのアクセス回復が不可欠だと主張している。
ゼレンスキー大統領は、ロシアが合意内容について虚偽の発言をしていると非難したが、その後、アメリカはロシアの農業・肥料輸出の世界市場へのアクセス回復を支援すると表明した。
◆黒海協定がウクライナにとってメリットがあるかは不透明
ロシアにとっての利益が明確である一方で、ウクライナ側は今回の黒海協定が自国にとってどのような利点があるのか疑問を呈している。たとえば、ウクライナの港湾への攻撃も停止されるのかどうかは不明だ。
ウクライナのジェレズニャク議員は「個人的には、これによって我々の輸出能力が大幅に向上するとは思えない。率直に言って、ウクライナの海上ドローンのおかげで、我々は黒海での能力を大きく拡張した」と語った。
実際、2023年にロシアが以前の黒海安全航行協定から離脱した後、ウクライナは独自の航路を開拓し、船舶がブルガリアやルーマニアの沿岸に沿って航行できるようにした。また、ウクライナ海軍が航行を支援する一方で、海上ドローン攻撃を展開し、ロシア艦隊を後退させる戦略を取っていた。
ジェレズニャク議員は「残念ながら、新たな協定は黒海における我々の影響力という観点では不利になる」と述べた。
◆エネルギー施設への攻撃停止をめぐる責任の押し付け合い
今回の停戦には、エネルギーインフラへの長距離攻撃の停止も含まれていたが、25日の発表直後から、戦闘停止の開始時期をめぐる見解の相違が浮き彫りとなった。
ロシアは、停戦は3月18日から開始されたと主張し、ウクライナがロシア国内のエネルギー施設を攻撃したことで停戦違反を犯したと非難した。しかし、ウクライナ軍参謀本部はこの主張を否定した。
その後、クレムリンは限定的な停戦の対象となる施設のリストを公表した。その中には、製油所、石油・ガスパイプライン、石油貯蔵施設(ポンプ場を含む)、発電・送電インフラ、発電所、変電所、変圧器、配電盤、原子力発電所および水力発電所のダムなどが含まれている。
By SAMYA KULLAB