核搭載戦闘機をドイツに配備、フランスが検討
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欧州の安全保障を強化したいフランスは、核兵器搭載可能なラファール戦闘機をドイツに配備する計画を検討しているという。英紙テレグラフが報じた。アメリカのトランプ政権が欧州防衛への関与を弱めるなか、フランスのマクロン大統領は欧州独自の核抑止力を構築したい考えだ。
◆仏大統領、欧州の核保護強化を図る
エマニュエル・マクロン仏大統領は24日、米ワシントンでトランプ大統領と会談し、ウクライナ問題や欧州の安全保障について協議した。
会談でトランプ氏は、ウクライナとの和平合意後の安全保障を拒否する姿勢を明確にした。これに対しマクロン大統領は、「平和はウクライナの降伏という形であってはならない」と明言したほか、欧州として自らの防衛能力を高める必要性を強調した。
ウクライナ支援や欧州の保護から距離を置くアメリカに対し、マクロン氏は欧州独自の防衛策を講じる必要性に迫られている。フランス政府高官は英テレグラフ紙に、「ドイツにフランスの核搭載戦闘機を数機配備するのは難しいことではななく、また、強いメッセージになる」と配備の有効性を強調した。
◆核弾頭を搭載可能なラファール戦闘機
配備計画の中心となるのが、仏ダッソー社製のラファール戦闘機だ。軍事専門サイト『アーミーレコグニション』によると、ラファール戦闘機はASMP-A(改良型中距離空対地ミサイル)と呼ばれる、核弾頭搭載可能な巡航ミサイルを運用する能力を持つ。ASMP-Aの射程は約500キロで、300キロトンの核弾頭を搭載可能だ。
米専門サイト『ウォーゾーン』はラファールB型機が、現在のフランス空軍で核戦略を担う存在であると述べる。フランスはサン・ディジエ・ロバンソン空軍基地を拠点に約50機を保有しており、エアバスA330 MRTT空中給油機の支援を受け活動範囲を延ばしている。
ラファール戦闘機は通常任務と核任務の両方に対応できる多目的性も特徴だ。なお、フランスは抑止力プログラムに加盟しているが、海上および空中発射型の核兵器約300点を保有している。
◆核防衛の自立化を進める欧州
ラファール戦闘機の配備計画は、イギリスにも影響を及ぼす見通しだ。テレグラフ紙によると、ドイツの外交筋は、イギリスのスターマー首相に同様の行動を迫る圧力になると指摘している。イギリスとしてもアメリカへの依存度を下げ、独自の防衛力強化を図る可能性がある。
一方、米シンクタンク「アメリカ科学者連盟」の核情報プロジェクト責任者であるハンス・クリステンセン氏は、ウォーゾーンに懸念のコメントを寄せている。クリステンセン氏は「フランスの提案はアメリカの状況を考えれば理解できる」としながらも、「フランスの空中発射型ミサイルは50発未満だ」と指摘し、数が圧倒的に不足していると論じる。
欧州と距離を置きロシアへ急接近するアメリカを前に、欧州は核を含めた安全保障上の自立への道を探っている。