ロシアに戦争やめる気なし、米情報機関分析 プーチン氏の望みは?
Alexander Kazakov, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP
アメリカのトランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に対する不快感を露わにし、ロシアに歩み寄った形で和平交渉を持ちかけようとしている。しかしロシアのプーチン大統領にとって和平は重要でないと、米誌は分析する。
◆就任4週間で和平へ踏み出したとの評価
米NBCニュース(2月19日)は、トランプ政権は就任からわずか4週間でウクライナ和平交渉の道筋をつけたと報じている。トランプ氏は、プーチン氏およびゼレンスキー氏とそれぞれ電話会談を実現している。
トランプ氏は記者団に対し、「プーチン氏は戦争をやめたがっている」と述べたうえで、「ゼレンスキー氏も和平合意を望んでいる」と説明した。アメリカ政府の外交・安全保障政策を統括する国家安全保障会議のヒューズ報道官は声明で、「トランプ大統領の指導力により、数年ぶりとなる交渉の機会が生まれた」と政権を自賛する。
トランプ氏の和平へのアプローチはロシアにとって有利だとの期待が、ロシア国内で広がっている。ロシア国内のメディアは、電話会談の内容をこぞって取り上げている。ロシアの調査報道記者のアンドレイ・ソルダトフとイリーナ・ボロガンの両氏は、政治専門サイト『ポリティコ』(欧州版)への寄稿で、開戦以来、西側の情報をロシアメディアが伝えるのは異例だと指摘している。
◆情報機関幹部「プーチンは勝利を確信している」
プーチン政権が望む和平条件は何か。英テレグラフ紙によると、プーチン政権は和平交渉における具体的な要求として、2022年9月に一方的な併合を宣言した4地域からのウクライナ軍撤退を掲げている。
さらに、北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナの加盟断念も求めているという。加えて同紙は、ロシアがポーランド、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国、ルーマニアに展開するNATO軍の削減もしくは完全撤退も要求する見通しだと報じている。
米NBCニュースは、アメリカおよびその同盟国の情報機関による最新の分析を伝えている。複数の西側情報機関の当局者は、プーチン氏は本格的な和平合意に関心を示していないと指摘する。
同局の取材に応じた情報機関幹部の一人は、「プーチンは勝利を確信している」と語った。ウクライナとヨーロッパが消耗するのを待ち、最終的にウクライナ全土の支配を目指す戦略を取っているという。実際にロシア軍は、ウクライナからの撤退や西部ロシアからの軍事装備の撤収に向けた計画を一切立てていないことが判明している。
◆ロシアは伝統的に、真の同盟国を持たない
トランプ氏の接近に心を開いたかに見えるプーチン氏だが、その腹中は読みづらい。ロシアのソルダトフ記者らはポリティコへの寄稿で、ロシア指導部は永続的な対西側和平は実現不可能との認識を持ち続けており、真の同盟国は存在しないとの信念を貫いていると論じる。ウクライナ和平はプーチン氏の優先事項ではないとの見方だ。
米NBCニュースは、米情報機関の最新の分析として、ウクライナ支配へのプーチン氏の野心は、バイデン政権からトランプ政権への政権移行期、そして新政権発足から1か月が経過した現在に至るまで、変わることなく維持されていると伝えている。
前政権よりプーチン氏への態度を軟化させたアメリカだが、このアプローチが真の和平への道となるかは不明だ。