米ロの第5世代戦闘機、インドで受注競争 ロシアは技術移転まで打診
ロシアのSu57戦闘機|Aijaz Rahi / AP Photo
ロシアとアメリカの間で、インドへの次世代戦闘機の売り込み合戦が過熱している。ロシアは技術移転まで打診するが、採用の見込みは薄いとの見方がある。
◆Su57を売り込むロシア
ロイター通信によると、ロシアがインドに対し、最新鋭ステルス戦闘機Su57の国内生産を持ちかけていることが明らかになった。インドは世界最大の武器輸入国であり、ロシアは長年にわたり最大の供給国であった。しかし、ウクライナ戦争の影響でロシアの輸出能力が低下。これを受けてインドは、調達先を西側諸国へも広げる方針を打ち出している。
そんななか、ロシア国営武器輸出企業のロスオボロン・エクスポートは、Su57戦闘機の直接販売、および共同生産の2案を提案した。印インディア・トゥデイ誌によると、どちらの案にするか、選択権をインドに委ねている。インド政府の承認が得られれば、今年にもSu57の生産に着手できるとの見通しを示している。
◆国産機の選択肢もあるが…
米ウォー・ゾーン誌は、インド空軍の現有機の老朽化が進むなか、国産と外国製の両面で新規調達を検討中だと伝えている。
国産機については、将来の主力機として第5世代戦闘機AMCAの開発を進めており、2036年の配備を目指す。当面の対応策として、軽量戦闘機テジャスMk 1Aをすでに83機発注しており、さらに97機の追加調達を予定だ。
だが、インディア・トゥデイは、AMCAの開発計画に遅れが生じていると報じている。同メディアによると、エンジンの技術的課題や開発遅延により、AMCAの2035年までの実用化が危ぶまれているという。開発の遅れを受け、当面の防空能力を確保するため、外国製戦闘機の導入を検討せざるを得ない状況に追い込まれている。
この状況を受け、アメリカは最新鋭のF35戦闘機の売り込みを本格化させた。F35は高度なステルス性能を備え、実戦での実績も豊富なことから、同メディアは「F35の導入がインド空軍の戦力を飛躍的に高める可能性がある」と伝えている。
◆Su57、F35とも選外との見方も
ロシアにとって、インド国内での生産を打診した点は有利だ。ロスオボロン・エクスポートはロイター通信に対し、「完全な技術移転を行ったうえで、インドが既存のSu30戦闘機生産ラインを活用できる」と説明している。この提案は、インドのナレンドラ・モディ首相が掲げる国内防衛産業の育成政策に沿った内容となっている。
ただし、Su57には依然として課題も残る。ロイター通信によると、2019年には試験機の墜落事故が発生したほか、開発の遅れが重なり、量産開始は2022年までずれ込んだという。
一方でウォー・ゾーン誌は、ロシアのSu57、アメリカのF35とも、導入は当面見送られるとみる。
最新鋭機の評価について、インドの防衛ジャーナリストのアンガド・シン氏は「ロシアのSu57は、第5世代戦闘機のなかで最も能力が劣り、完成度も低い」と指摘する。またアメリカのF35については、インドがすでにロシア製の最新鋭防空システムS400を保有している点が不利に働くという。
国際的な摩擦を避けるうえでも、実績ある第4世代機を選定対象に据える可能性があるようだ。