中国はどうトランプに対抗するのか?

Susan Walsh / AP Photo

 11月のアメリカ大統領選挙の結果、トランプ氏が激戦7州を制し、ハリス氏に大差をつけて圧勝した。同時に行われた連邦議会選挙でも共和党が上院と下院で多数派となり、トランプ氏にとって極めて政権運営がやりやすい、最高の政治的環境が整った。政権の発足は来年1月だが、すでにトランプ外交は始まっている。カナダのトルドー首相はフロリダにあるトランプ氏の自宅マール・ア・ラーゴを訪問し、夕食を通して建設的な関係構築に努めた。一方、トランプ関税の直接的な標的となる中国はどういった姿勢に転じるのだろうか。

◆相次ぐ対中強硬派の抜擢
 トランプ氏が最も重視する外交政策が対中国であることは間違いない。トランプ氏は外交を司る国務長官に対中強硬派のマルコ・ルビオ上院議員を起用するとされるが、ルビオ氏は中国・新疆ウイグル自治区の人権問題を重視し、台湾防衛を積極的に支援する姿勢を示している。

 安全保障担当の大統領補佐官にはマイク・ウォルツ下院議員が起用され、ウォルツ氏も中国海軍の軍備増強に対抗するため、アメリカ海軍の艦船や装備の増強を訴えている。このような人事配置から、来年1月に発足する第2次トランプ政権が中国に対して厳しい姿勢を取ることに疑いの余地はない。

◆テクニカルに動く中国
 そして、中国もトランプ政権が強硬姿勢で対応してくることはすでに織り込み済みだろう。トランプ政権1期目の際、米中間で貿易摩擦が拡大し、中国もトランプ関税に対抗して対米関税を次々に発動し、いわゆる貿易戦争が激化した。来年以降、米中間では再び貿易摩擦が拡大する可能性が非常に高いが、1期目の時と比べ、中国は冷静な対応に努めることを第三諸国に強調するだろう。

 中国の習近平国家主席は11月、ブラジルで開催された主要20ヶ国・地域首脳会議(G20サミット)で、中国は多国間主義と国連を中心とする国際システムの重要性を共有し、孤立主義と保護主義に反対し、開かれた世界経済を構築する必要があると強調した。この発言は、保護主義的な姿勢を堅持するトランプ氏を意識した発言と考えられ、中国としてはアメリカの姿勢を強調し、それが市場経済や自由貿易に対する脅威であると訴えることで、欧州と日本などをアメリカから引き離したい狙いがある。トランプ氏の保護貿易主義などは、実際に中国、日本、欧州などが共有する懸念でもある。

 また、中国経済は以前の勢いを失い、不動産バブルの崩壊や高い失業率など、習近平政権は経済的難題に直面している。その状況下でトランプ関税に直面することになる中国からすると、欧州や日本、そしてグローバルサウスなどとの関係を維持、強化することで国内経済への影響を最小限にしたい思惑がある。第2次トランプ政権に対し、中国は前回よりテクニカルに対応していくことが考えられる。

Text by 和田大樹