「もがみ型」が豪新型艦計画の最終候補、現地報道 総額1兆円超、ドイツと受注争う
オーストラリアの次期フリゲート艦建造計画で、共同開発国として日本とドイツの2ヶ国が最終候補に選定された。オーストラリアの公共放送ABCが報じた。現行のアンザック級フリゲート艦の後継艦を建造するもので、日本の「もがみ型」とドイツの「MEKO A-200」が最終選考に残っている。
◆日独が最終候補に
豪ABCは8日、国家安全保障委員会(NSC)が、最終選考に残る2つの設計案として、日本の改良型「もがみ30FFM」およびドイツの「MEKO A-200」を選定したと報じた。
11隻のうち最初の3隻は受注した国で建造され、その後、西オーストラリア州のヘンダーソン造船所に移送される予定だ。今後10年間で110億豪ドル(約1.1兆円)を投じ、最終的にはアンザック級艦隊を置き換える計画だ。日本またはドイツを決める最終選考は来年となり、2029年に最初の艦が引き渡される見通しとなっている。
◆「もがみ」に白羽の矢の理由
豪キャンベラにあるオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の元国防・戦略・国家安全保障プログラムディレクターであるミカエル・シューブリッジ氏は、米軍事メディアのリアル・クリアー・ディフェンス(RCD、9月14日)への寄稿で、オーストラリアが「もがみ」型フリゲート艦に注目する理由を解説している。最大の特徴は、垂直発射システム(VLS)を備え、対艦、対空、対潜の各種ミサイルを運用できる点だという。
また、武器システムの製造面で日本は、三菱重工業をはじめとする防衛企業が高性能な国産ミサイルを製造しているほか、オーストラリア海軍も採用しているSMファミリーなど、アメリカ製ミサイルの共同生産実績も持つ。そのため「もがみ」型艦は、オーストラリアがすでに運用している武器システムと一定の互換性を備えている。
一方、日本がオーストラリア側に提案を持ちかける背景としては、アメリカとの既存の連携に加え、さらに安全保障上のパートナーのネットワークを広げたいという思惑がある。
テンプル大学東京キャンパスのジェームズ・ブラウン教授(国際関係学)は、香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポスト(9月4日)に、「日本は(アメリカ以外の)ほかのパートナーとの関係を深める必要があることも認識しており、そのリストのトップに位置するのがオーストラリアだ」と語る。
◆日本の再提案は「幸運」だが、実績に不安も
建造国の選定は、オーストラリアにとっても、安全保障上、重要な意味を持つと論じる。
オーストラリアは2010年代、日本の「そうりゅう」型潜水艦の契約を見送っている。そのうえで今回、日本からの提案を再び得る形となった。シューブリッジ氏はRCDへの寄稿で、「我々は幸運である」と述べている。既存の豪英米の防衛協力の枠組み「AUKUS」をさらに強化する形で、日本を含めた「JAUKUS」のパートナーシップ形成に期待を込める。
一方で、日本の課題も浮き彫りになっている。豪ABCは、日本は戦艦の輸出経験が限られているため、実績面での不安は否めないと指摘する。また、同じく最終候補となったドイツのMEKO A-200と比較して、価格面での競争力に課題があるとされる。
ドイツを超えてオーストラリアと緊密な安全保障関係を築けるか、結果は来年の最終決定を待つことになる。