日本の「空母」に米軍のF35戦闘機が着艦 東シナ海での抑止力強化へ試験
海上自衛隊の護衛艦「かが」で20日、アメリカ海軍のF35B戦闘機による初の着艦試験が行われた。カリフォルニア州サンディエゴ沖で実施されたこの試験は、日本では戦後初となる空母型護衛艦の運用に向け、重要な一歩となる。排水量1万9950トンの「かが」は、耐熱塗装や夜間照明の設置など大規模な改修を終え、今後約3週間にわたり発着艦試験を繰り返し実施する。インド太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増すなか、日米同盟の抑止力・対応能力向上を目指す。
◆史上初の着艦に成功
F35Bの着艦は現地時間20日午後3時ごろにカリフォルニア州南部沖で行われた。試験にはアメリカ海軍第23飛行試験評価隊(VX-23)のF35Bと、パタクセント・リバー統合試験部隊(PAX ITF)のチームが参加した。整備士、飛行試験技師、飛行試験管制官、甲板要員、後方支援要員らが「かが」に乗り込み、入念な準備のもとテストを支援した。
F-35Bが現地時間10月20日15時ごろ、初の着艦に成功!!🛩⚓ @USNavy @USMC
矩形の飛行甲板となった護衛艦「#かが」は #F35B の艦上運用に必要な諸元を収集するため、🇺🇸サンディエゴ沖にて米海軍及び米海兵隊の支援を得て所要の試験を実施中です!#自由で開かれたインド太平洋 pic.twitter.com/ar7tVYhSEc
— 防衛省 海上自衛隊 (@JMSDF_PAO) October 21, 2024
「かが」は今回の試験のため、カリフォルニアへの長い航海を経ている。9月に広島の呉基地を出港し、10月5日にサンディエゴに到着した。試験にあたり「かが」は改修を実施しており、アメリカ海軍の強襲揚陸艦に近い外観となった。F35Bのベクタードエンジンを踏まえた耐熱塗装の施工や、夜間運用可能な照明設置に加え、飛行甲板の形状を台形から長方形に変更している。
◆着実に進められた「空母」への改修計画
「かが」の改修により、日本の海上防衛力を大きく向上させる可能性がある。政府は2018年に定めた中期防衛力整備計画で、「いずも型」護衛艦2隻を事実上の空母に改修することを明記した。同艦は当初、対潜水艦戦を念頭に置いたヘリコプター搭載型護衛艦として建造されていた。その後、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)が可能なF35B戦闘機42機の導入が決定され、両艦の改修に着手している。
改修作業は着実に進んでいる。先行する「いずも」は2021年に第1段階の改修を終え、アメリカ海兵隊のF35Bによる初の発着艦試験を実施した。「かが」は2022年3月から改修を開始し、今年4月に完了している。米ニューズウィーク誌は、両艦とも2027年までに戦闘機の運用が可能になる見通しだと伝えている。
◆中国弾道ミサイルも念頭、抑止力強化へ
今回の発着艦試験は、単なる技術実証の域を超えた重要な意味を持つ。ニューズウィークは、特に台湾に近い南西諸島では、通常戦闘機が離着陸できる飛行場が限られており、有事の際には中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの標的となる可能性が高いと指摘する。空母型護衛艦を運用することができれば、東シナ海でより柔軟な戦闘機の運用が可能になる。
軍用航空専門サイト『アビエーショニスト』によると、「かが」艦長の竹内周作1等海佐は、「この試験は日本の防衛力強化に不可欠で、極めて重要だ。日米の相互運用性を向上させ、同盟の抑止力と対処力を強化することで、インド太平洋地域の平和と安定に貢献する」と語っている。アメリカ側からは、PAX ITF部隊長のセス・ディオン氏が米軍事専門誌のナショナル・インタレストに対し、「この共同の取り組みに参加できることを誇りに思う。我々のチームはこの任務のために入念な準備を行ってきた」とコメントした。
インド太平洋地域の安全保障環境が変化するなか、F35Bの初着艦試験の成功は日米同盟の新たな可能性を示す一歩となった。