中国、潜水艦へのレーザー兵器搭載を検討 スターリンク衛星への攻撃視野

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 中国人民解放軍(PLA)が、潜水艦へのレーザー兵器の搭載を研究しているという。海上から敵国の衛星を妨害するためのもので、スペースXのスターリンク衛星もターゲットになり得るという。

◆潜水艦からレーザーを発射
 香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙(7月20日)によると、PLAが研究中の手法は、メガワット級の固体レーザー兵器を潜水艦に搭載し、発射装置となる「光電子マスト」を海上に突き出してレーザーを放つことで、潜水艦本体は水面下に潜んだまま衛星に攻撃を仕掛けられるという。

 海軍潜水艦アカデミーの王丹教授率いるプロジェクトチームが発表した査読済み論文が先月、中国のジャーナルに掲載され、それによると、このタイプのレーザー攻撃型潜水艦は将来的に量産され、 中国への軍事的 脅威に対抗するためにさまざまな海に配備される可能性があるという。

 具体的な攻撃手順は、まず、司令部の指示に従い、レーザー兵器を搭載した潜水艦が作戦海域に展開される。次に、潜水艦は衛星が攻撃範囲に入るのを待つ。このとき、事前に取得した衛生の軌道データが用いられる。

 衛星が攻撃可能範囲に入ると、レーザー兵器が展開される。潜水艦の探索能力には限界があるため、詳細な位置誘導は潜水艦外部の部隊に頼ることになる。潜水艦は、格納式の「光電子マスト」を伸張させ、レーザーの発射に備える。攻撃が完了すると、潜水艦は再び潜水し、次の任務を待つか母港に戻るという。

◆衛星戦争で「革命」になり得る
 衛生への攻撃にはこれまで、地対空ミサイルを用いる手法が存在した。オンラインメディアのアジア・タイムズ(7月22日)は、従来の地対空ミサイルに比べて攻撃の隠蔽性が高く、衛星攻撃の効果が高まる可能性があると分析している。同誌は、「対衛星(ASAT)戦争に革命をもたらす可能性がある」と報じる。

 レーザーへの切り替えにより、防御面でも有利となる。サウスチャイナ・モーニングポスト紙は、ミサイルを発射すれば長い煙の軌跡が残ると指摘する。発射地点が容易に露見するため、敵の反撃を受けやすい欠点があった。

 従来の地対空ミサイルに対する利点は、ほかにもある。

 軍事情報を報じるアーミー・レコグニション誌は、即時性・正確性に秀でると評価する。レーザー兵器は光速で目標に到達するため、ミサイル飛翔時間のようなタイムラグがない。また、レーザーの発射精度は非常に高く、特定の位置を狙って攻撃することが可能だ。

 コスト面でも有利だ。アジア・タイムズは、レーザー兵器は発射コストが低く、弾薬の補給が不要であるため、長期的な運用コストが低いと評価している。

◆スターリンクや台湾への攻撃念頭に
 PLAの科学者チームの論文では、攻撃対象として具体的にスターリンク衛星の名前が挙げられているという。スターリンク衛星は非常に数が多いことから、「このような衛星を攻撃するためにミサイルを使用することは非常に非効率的である」と指摘する。そのうえで、「潜水艦ベースのレーザー兵器により、これらの問題を解決することができる」と述べている。

 アーミー・レコグニション誌は、同論文が「台湾に関する紛争の可能性についても数多く言及している」とする。論文は、台湾が民間物資を海上輸送に依存していることから、港湾施設に対するレーザー攻撃を受けた場合、脆弱であると指摘している。

Text by 青葉やまと