待望のF-16受領間近、ロシアの防空システムを破壊するウクライナ

Virginia Mayo / AP Photo

 ウクライナは長年にわたり、F-16戦闘機の供与を西側諸国に対して求めてきた。今年6月から7月かけ、待望の初の供与が実施される見通しだ。ロシアからの領土保全に極めて有利に働くと期待される一方、実戦投入には課題をはらむ。

◆NATOは計60機以上を供与
 F-16は、ベトナム戦争終盤の1970年代に設計された歴史ある戦闘機だ。軽量化と空力性能の向上を重視した設計を特徴とする。世界の多くの国で使用されており、これまでに4600機以上が製造された。

 米議会が出資するラジオ・フリー・ヨーロッパ(6月7日)によると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるデンマーク、オランダ、ノルウェー、ベルギーは、計85機のF-16をウクライナに供与する意向を示している。AP通信(6月10日)は、これら4ヶ国が「60機以上のアメリカ製F-16戦闘機」の提供に合意したと報じた。

 F-16の設計当時はドッグファイト(空中機動戦)を念頭に、機動力が重視された。近年の戦闘では、あまり見られなくなっている。だが、機動力と攻撃力の高さは現代でも有益となる。アメリカの元F-16パイロットはラジオ・フリー・ヨーロッパに対し、ウクライナ軍にとって、ある種の「非常に柔軟な長距離砲」として機能するとの見解を示している。

◆実戦に1年以上を要するとの見方
 導入にあたり、訓練面での課題が指摘されている。米軍パイロットであるキース・ローゼンクランツ氏は、ラジオ・フリー・ヨーロッパの取材に応じ、ウクライナ軍のパイロットがF-16で戦闘任務を遂行できるようになるまでには、長期間の訓練が必要であると指摘している。

 「ダミーの標的に爆弾を落としたり、空対空のシナリオで別種の航空機と交戦したりする訓練任務に出ることがあるでしょう」とローゼンクラッツ氏は語ったうえで、こう続ける。「しかし、敵がまさにあなたを殺そうとしているときに、こうした行動を取るとなると、それはまったく別の話なのです」

 ローゼンクランツ氏は湾岸戦争で、F-16によるミッションを30回遂行した。氏自身も、1200時間以上の飛行時間を積んだうえで戦闘任務に就いたという。ウクライナ軍のパイロットがF-16に慣れるまでには、約1年がかかると想定される。

 対応はすでに始まっている。ウクライナのパイロットたちがNATO諸国で訓練を受けており、ウクライナはF-16を運用するためのインフラ整備に着手している。

◆F-16投入への下地作り
 ウクライナはF-16戦闘機の到着を前に、ロシアの防空システムを無力化するための作戦を展開している。

 クリミア半島南部のセヴァストポリ近くでは、ロシアのS-300およびS-400防空レーダーシステムを破壊し、同じく南部のジョンコイ軍用飛行場近くでもS-400防空ミサイルシステムを破壊したと報じられている。ロシア領内でも、Su-57ステルス戦闘機を損傷させた。

 AP通信によるとウクライナは、F-16の受領後、慎重に保管・運用を行う構えだ。ロシアの攻撃から守るため、国外の安全な空軍基地に保管する可能性があるという。

 一方、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへのF-16戦闘機供与に不快感を示す。ラジオ・フリー・ヨーロッパによるとプーチン氏は、仮にNATO諸国の基地から運用される場合、当該施設を攻撃する可能性があると警告している。

 戦争のエスカレーションを避けたいNATOは、ウクライナ支援とロシアを刺激したくない実情の狭間で、難しい采配を迫られている。

Text by 青葉やまと