ロシア戦車、「亀武装」した目的は? 弱点露呈し、大破相次ぐ
ロシア軍は4月初め、ウクライナ戦線で「亀戦車」の導入を始めた。ウクライナのドローンから投下される爆弾への防護措置を取ったものだが、不格好さと効果の薄さから嘲笑の的になっている。
◆金属板や丸太を追加
米ディフェンス・ニュース誌によると、ここ2ヶ月間ほどで、ロシア軍の戦車に特異な装甲を施した姿が目撃されるようになった。金属屋根と鉄格子で戦車本体を囲ったもので、ウクライナのソーシャルメディアでは「亀戦車」と呼ばれているという。
Videos of a Russian “turtle” tank with counter-FPV screens and shelter and a KMT-7 mine roller. https://t.co/s9A0W0ev9X pic.twitter.com/XdDzGGKpXv
— Rob Lee (@RALee85) May 5, 2024
亀戦車は、T-62、T-72、T-80戦車をベースに、二重の屋根を追加し、周囲を鉄格子や鉄板、あるいは丸太で囲んだものだ。ウクライナ軍はドローンに毎月10万個ともいわれる爆弾を搭載して放っており、その対策として導入された。米フォーブス誌は、「亀戦車はロシアの作戦にとって大きな恩恵であり、ウクライナの作戦にとっては深刻な脅威だった」と指摘する。
Another video of that Russian tank. https://t.co/856byTmabI pic.twitter.com/dg9KhfcD3R
— Rob Lee (@RALee85) April 17, 2024
/1. Abandoned Russian ‘turtle’ tank on the Krasrohorivka front.
Recently, the Russians have been using more tanks with modifications like this one. https://t.co/UAtPkv0roc pic.twitter.com/s3D3wrFEtc— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) April 25, 2024
◆米支援で有効性が失われる
ドローン攻撃からの防御で一定の効果を発揮する一方、完璧には機能していないとの指摘がある。ディフェンス・ニュースによると、ドローンの爆薬を戦車本体に到達する前に爆発させ、弾丸が外壁を貫通する可能性を減らすための措置だった。だが、「結果はまちまちだ」と同誌は指摘する。
ウクライナ第79旅団はソーシャルメディアに、「戦車に施された保護用の金属板でさえ、標的を絞った砲撃に対して役に立っていない」と投稿した。米ニューズウィーク誌によると、不格好な亀戦車に対し、ソーシャルメディアでは嘲笑の声も上がっているという。
Even the Russian turtle tanks can be destroyed pic.twitter.com/5K8EFDz2le
— PS01 (@PStyle0ne1) May 13, 2024
さらに、転換点となったのが、アメリカの支援だ。4月末、アメリカ国防総省はウクライナに14億ドルの兵器支援を行った。これとチェコから届いた大量の弾薬により、戦線全体の状況が変わりつつある。
フォーブス誌は、1ポンドの爆薬を積んだドローンに対しては金属製の屋根で防げるかもしれないが、25ポンド以上の砲弾に対しては「役立たずにもほどがある」と指摘する。ロシアの攻撃に対し、ウクライナの旅団は100ポンドの砲弾や50ポンドのミサイルを発射できるようになった。これらを受け、亀戦車の大破が相次いでいる。
Javelins and FPV drones leave no chances for the occupiers.
Even the "turtle tank" can't resist such a fiery combo.📹: 93rd Mechanized Brigade pic.twitter.com/dm1FAKmpu8
— Defense of Ukraine (@DefenceU) May 16, 2024
◆厳重な装甲があだに
いまでは亀戦車は、ロシア軍にとって災いのタネになっている可能性がある。欧州政策分析センターのフェデリコ・ボルサーリ研究員は、ディフェンス・ニュース誌に対し、「丸太の装甲と金属板を追加し、戦車の3つの側面と上面を完全に覆う本格的な金属製の殻を作っている。これにより砲塔の回転が不可能になり、車両の視界が大幅に制限される」と指摘している。
非常時の対応も問題だ。フォーブス誌は、「砲弾が亀戦車の甲羅を貫通した場合、車両内はオーブンのように(高熱に)なる可能性がある」と論じる。視認性と機動性を向上させるために甲羅を縮小することもできるが、その場合、ドローン攻撃が貫通しやすくなる。ロシアは車両設計を改造するか、あるいは放棄する可能性がある、と同誌は論じる。