中国新型空母「福建」、米アナリストらの見方は? 米空母と比較すると…

Pu Haiyang / Xinhua via AP

 中国の最新空母「福建」が1日、上海から東シナ海に向けて出航した。今回の目的である初の海上試験などを経て、2026年までの就役を見込む。米メディアは改良されたカタパルトに注目し、米最新空母「USSジェラルド・R・フォード」と肩を並べたとする一方、能力などの差についても指摘している。

◆電磁式カタパルトで遠方の制圧能力を強化
 「福建」は中国最新の空母であると同時に、最大の空母でもある。最大の特徴は、電磁式カタパルトの採用だ。スキージャンプ式を用いる既存1番艦「遼寧」および2番艦「山東」よりも、重量のある航空機を発艦させる能力がある。すなわち「福建」は、既存艦よりも重量のある弾薬を搭載した、より航続距離の長い戦闘機を発進させることが可能になる。

 東シナ海における中国の存在感はますます大きくなりそうだ。こうしたことから、アナリストたちは、中国人民解放軍海軍(PLAN)がいわゆる「ブルーウォーター・ネイビー」の能力を手にすることになるとみる。外洋海軍とも呼ばれ、自国沿岸から遠く離れた外洋の制圧能力を有する海軍を指す。

 米ナショナル・インタレスト誌(4月30日)は、「PLANは、2023年(注:2035年の誤記とみられる)までに6隻の空母を就役させるという目標を掲げており、アメリカに次いで世界第2位のブルーウォーター海軍となる」との見方を示している。

◆米空母との比較
 米CNN(5月1日)は、「電磁式カタパルトシステムにより福建は、現役空母として世界で唯一電磁式カタパルトを搭載している米海軍の最新空母『USSジェラルド・R・フォード』と肩を並べることになる」と指摘。米海軍はほかに10隻の旧式のニミッツ級艦を保有するが、いずれも蒸気式カタパルトを使用している。

 しかし、航続力や大きさなどの面でまだ米海軍の空母とは差がある。ニミッツ級艦を含む米空母はすべて原子力空母だが、通常動力空母の福建は燃料補給のために寄港するかタンカーによる海上補給を必要とする点で制限がある。福建の満載排水量が8万トン(山東は6.6万トン、遼寧は6万トン)であるのに対し、ジェラルド・R・フォードは10万トン(ニミッツ級10隻は9〜10万トン)だ。

 また、カタパルトの数は、福建は3基と、アメリカの空母より1基少ない。収容できる航空機も、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の推定によれば、福建は約60機、ジェラルド・R・フォードは約75機だ。

 米外交問題評議会のブラッドフォード研究員は、アメリカの空母は「依然として独自の地位を保っている」と述べている(CNN)。

 米ポピュラー・メカニクス誌(4月10日)は、中国の電磁式カタパルトはアメリカの空母で採用されている方式と異なると指摘する。中国式ではフライホイールに運動エネルギーを蓄え、物理的に直接接触しない渦電流クラッチと呼ばれる機構を介し、空母を牽引(けんいん)するフックを巻き上げる。アメリカ式はこれよりも先進的で部品点数も少ないが、それでも初の空母からわずか12年で電磁式を実現した中国は「相当な実績」を積んだと同誌は述べている。

◆中国の野心の高まりを象徴
 カタパルトは中国の野心の象徴と捉えられている。ポピュラー・メカニクス誌は、中国が2012年の「遼寧」と2019年「山東」を含め、わずか12年間で3隻の空母を建造したと振り返る。最新式カタパルトへの変更は、「中国が強大なアメリカ海軍に匹敵する、あるいはそれ以上の能力を発揮しようとする意欲を示している」と同誌はみる。

 ナショナル・インタレスト誌によると「福建」はまた、電磁気と水圧により着艦時の衝撃を抑える「先進着艦拘束装置(AAG)」を搭載する。航空機の収容能力は60~70機分になるとみられる。こうしたスペックから記事は、「世界第2位のブルーウォーター海軍になるという目標の達成に近づくもの」であり、「中国の海軍の力と戦略的野心の高まりを強調するものだ」と分析している。

 軍事分野における中国の存在感は、日増しに高まっている。

Text by 青葉やまと