なぜロシア兵の死者が増えているのか? 1日に800人超、侵攻1週目以来の多さ
◆「七面鳥のように撃たれた」粗末な攻撃作戦
惨状にロシア側も頭を抱える。米CNN(2月13日)によると、新ロシア派として独立を宣言しているドネツク共和国のイーゴリ・ストレルコフ元国防相は、「彼らは射撃場の七面鳥のように撃たれた」と述べた。これはウクライナ戦で要衝となっているドネツク州ブフレダールの占領作戦の不調を批判したものだ。
不調の原因の一端は、無計画な進軍にあるようだ。同記事によると、11月のブフレダール占領作戦では第155海兵旅団に多数の死者が生じ、よもや兵が反乱に蜂起する寸前となった。同地で1月末に実施された作戦でも狭いルートを進軍し、建物の上に配置されたウクライナ兵から丸見えという状況だったという。軍事歴史家のトム・クーパー氏は、ロシア側の粗末な作戦によりウクライナ軍は「兵站ルートと退路に使えるルートの両方を絶つ」ことが可能だったと指摘する。
BBCによると、ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニロフ書記は「我が軍は(敵の攻撃を)非常に強力に退けている」「彼らが計画した攻勢はすでに徐々に行われているが、彼らが思い描いた攻勢にはなっていない」と述べ、防衛が効果的に行われているとの見解を示した。
◆頼みの綱のワグネルも……
統率の乱れで弱体化が顕著となったロシア軍は、軍事企業ワグネルの支援を頼りたいところだ。しかし、軍とワグネルの間には望まざる緊張が走っている。BBCによると、ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は通信アプリ「テレグラム」上で、戦場を見渡す限りロシア兵は見当たらず、ワグネルの戦闘員しかいないと吹聴した。BBCは「この発言は、ロシア軍とワグネルとの長年にわたる緊張関係を示唆している」と指摘する。
ワグネルに関してNYT紙は、囚人を傭兵として採用し、「大砲の餌」として使い捨てにしていると報じている。
ロシア兵の死者数が上昇する背景には、正規軍内部の統率に乱れが生じていること、頼りのワグネルと連携が不足していること、そしてワグネルが人命を軽視していることなど、複合的な要因が介在するようだ。
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