気球撃墜、「新冷戦」を決定づけたのか 強硬論に傾く米中 「意図しないエスカレート」懸念も

撃墜した中国の偵察気球を引き上げる様子(U.S. Navy via AP)

◆超党派で反中国に傾くアメリカ
 一方、アメリカ側は気象用との説明を鵜呑みにしているわけではない。カタールのアルジャジーラは、米国防総省が気球を「高高度偵察気球」とみなしていると指摘する。当局関係者は気球が「軍事的または物理的脅威」を直ちにもたらすものではないと説明しているが、議員の間では気球問題を契機に、中国に対して「立ち上がる」べきだという「ほぼ党派を超えた合意」が形成されつつあると記事は報じている。

 気球そのものに加え、中国の人民解放軍が米軍側と適切なコミュニケーションを取っていないことを危険視する向きもある。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(2月9日)は、中国軍が対話を拒み続ければ「意図しないエスカレーションという結果に直面することになるかもしれない」と警鐘を鳴らしている。

 中国軍は過去、不快感を示す目的で、対話のチャンネルを閉じたり開いたりしてきた。同記事によると、国防総省のパトリック・ライダー報道官は対話の問題に触れ、「重要なのは、責任ある国が責任を持って行動することだ」と述べている。対話を拒むことで主導権を握ろうとする中国の手法に、アメリカ側は苛立ちを募らせているようだ。

◆「新たな冷戦を決定づけた」
 CNN(2月6日)は、気球問題が「新たな冷戦を決定づけた瞬間」になり得ると警告している。世論が反中国に傾くことで、「(バイデン)大統領は対立を緩めるためにスピードを落とす外交上の余地がさらに限定されるだろう」と記事は見る。もう一つのリスクとして、南シナ海や台湾周辺など米中の緊迫が続く領域において、事態がエスカレートする恐れもあるという。

 中国側もさらなる対立を辞さない構えだ。ガーディアンによると中国のグローバル・タイムズ紙は、気球事件をめぐるアメリカの対応が「新冷戦の毒々しい雰囲気をさらに増大させる」と主張している。

Text by 青葉やまと