ロシアによるウクライナの子供連れ去り、オランダ、ドイツの外相が非難

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 ドイツとオランダの外相は16日、ウクライナの子供数千人がロシアにより連れ去られていることを指摘し、周到な計画のもとで、残酷で非人道的な移送により家族が引き裂かれていると非難した。

 ロシア政府がウクライナでの戦争を開始してからおよそ1年の間、ロシアは国内もしくは支配地域へウクライナの子供を移送し、養子にしていると批判されてきた。地方当局によると、ヘルソン州ではロシアの占領下に置かれている8ヶ月間に、少なくとも1000人の子供が学校や児童養護施設から連れ去られたという。いまもなお、子供たちの行方は分からない。

 ロシアは、このような子供たちには目をかける親や保護者がいないか、もしくは連絡先が不明であると主張する。しかしAP通信による取材からは、ロシア当局がウクライナの子供を同意なくロシア国内や占領地域へ移送し、親に必要とされていないと嘘をつき、プロパガンダに利用し、そしてロシア人家族の養子にしたり市民権を与えたりしている状況が明らかになっている。

 ドイツのアンナレーナ・ベーアボック外相は、オランダのウォプケ・フクストラ外相とハーグで共同記者会見を行い「このような子供たちの行方について、ロシアには説明責任がある」と述べている。

 ベーアボック氏は「子供たちの親や家族、世話をする人は、これ以上、不安や恐怖のなかにいるべきではありません。ウクライナには子供たちの家族があり、帰る場所があるのです。子供たちは自ら進んで家を出たわけではありません。強制的に連れ去られたのです」と訴えた上で、ドイツとオランダの両外相が国際連合や国際刑事裁判所(ICC)などの組織と協力しながら、この問題に取り組んでいく考えを示した。

 フクストラ氏は「ロシアの計画的な手段によって家族が引き裂かれ、子供たちは精神的な傷を負っています。これは残酷であり非人道的なことです。ロシアにより連れ去られた子供たちが、できるだけ早い段階で必ず自国に戻るということを明確にしたいと思います」と述べている。

 ベーアボック氏はハーグ滞在中にICCを訪問し、カリム・カーン主任検察官と協議を行った。カーン氏は、2022年2月24日にロシア政府が侵攻を開始した直後からウクライナで調査を行ってきた。ウクライナを訪問し、犯罪が疑われる現場に捜査チームを派遣しているものの、捜査から得た証拠はまだ発表されていない。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、ICCが犯罪であると定義する侵略行為にあたることが広く認識されている。しかし、ロシアとウクライナの両国がICCに加盟していないため、カーン氏には管轄権が与えられていない。

 この状況を受け、ウクライナへの侵略行為をめぐって国際法廷の設置を求める声が高まっている。フクストラ氏は2022年末に「ICCや国際司法裁判所など、国際司法機関の本部が設置されているオランダにはこのような法廷の開催場所を提供する準備がある」と述べている。

 ベーアボック氏は「ロシアによる侵略や犯罪に対して法廷を設置したいというウクライナの要望」をドイツが支持する考えを示した。また、国際刑事裁判所に関するローマ規程を改訂し、侵略行為の標的となった国がICCに加盟することで裁判権が得られるようになることを望んでいるとしている。

 同氏は「ドイツとオランダは協力して、ウクライナに侵攻したロシアの犯罪を裁くための捜査機関設置を目指す」と述べている。

By MIKE CORDER Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP