サウジの裏切りに「プッツン」、米が関係見直しへ OPECプラス原油減産
11月の中間選挙まであと1ヶ月を切ったアメリカで、サウジアラビアとの外交関係を見直す声が上がっている。それはこのタイミングで石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくるOPECプラスが原油の減産を公表したからである。OPECプラスはパンデミック発生後最大となる1日200万バレルの原油を減産する。この動きをバイデン政権は重く受け止めており、サウジアラビアとの関係を再評価している。
◆遠回しの選挙妨害
アメリカでは新型コロナウイルスのパンデミック後に起こった急激なガソリン価格や物価の高騰によって、バイデン大統領と民主党の支持率が下がっていた。インフレーションは世界的現象であり政府の責任とは言えないが、国民は自分たちの身に降りかかる問題を政権のせいにする傾向がある。ここ3ヶ月はインフレも落ち着きを見せ、ガソリン価格もパンデミック前のレベルに戻りつつあるところだった。
そのなか、今後の民主主義に大きな影響を与えるとされる今年の中間選挙直前になりサウジアラビアとロシアが中心となり原油の大幅減産を決定したという事実を、バイデン政権はいわば「遠回しの選挙妨害」として受け止めた。原油減産によりガソリンが再び高騰して政権と民主党支持に悪影響を及ぼすからである。
◆アメリカとサウジのこじれた関係
表向きはアメリカとサウジアラビアは経済面でも防衛面でも深い外交関係を保っているが、実は二国間の関係は2001年9月11日の同時多発テロ事件からこじれ続けている。事件首謀者であったオサマ・ビンラディン容疑者をはじめ実行犯にもサウジ人が多かったことから、アメリカではこの事件が同国の国家的犯罪であったとする説はいまも根強く残っている。
その後2018年に、同国からアメリカに移民してワシントン・ポスト紙に寄稿していたジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害事件が発生し、同国皇太子の関与が取り沙汰されたことで外交関係が一気に悪化。しかし当時大統領だったトランプ氏や同氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏は、同国王家と親密な関係を続けていた。
またトランプ氏はロシアのプーチン大統領とも親密な関係にあるが、バイデン政権はウクライナ侵攻の件などでロシアと敵対関係にある。今回の中間選挙でバイデン政権や民主党が不利になれば、トランプ氏と共和党に有利になるということであり、それがロシアとサウジアラビアにとっても好都合である。そのため民主党はいままで持ちつ持たれつの関係にありながら、この期に及んでロシアの側につき、アメリカを「裏切った」サウジアラビアに対する堪忍袋の緒が切れたのだろう。
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