ロシア・ベラルーシの「移民送り込み」攻撃に備え 欧州でフェンス設置進む
◆東欧諸国で壁増える 対ロ対策も
国境にフェンスを設置する国はリトアニアだけではない。そもそも難民対策としてのフェンス設置は以前からあり、2015年の欧州難民危機の際にはハンガリーがセルビア国境に設置した。この時リトアニアはハンガリーを批判している。(BNN)
ポーランドもリトアニア同様、ベラルーシからの難民に手を焼いている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によれば、ポーランドは3億5300万ユーロ(約506億円)をかけて半年間で高さ5メートル186キロに及ぶ鉄柵を建設した。難民の流入は減っており、モラヴィエツキ首相はベラルーシのルカシェンコ大統領の工作による難民危機を食い止めたと自国を称えている。
ラトビアでもすでにベラルーシ国境に仮設フェンスが設置されているが、恒久的なフェンスを建設する計画が2024年2月末完成予定で進んでいる。今後はロシアとの国境にも設置予定ということだ。(BNN)
北大西洋条約機構(NATO)加盟を望むフィンランドでも、ベラルーシと同様の難民を使ったロシアによるハイブリッド攻撃に備え、例外的状況下で亡命希望者に国境を閉鎖できるようにする法案が可決された。これにより、ロシアとの国境にフェンスなどの障壁を設けることも可能になる。(ロイター)
◆人種差別、環境問題……壁に問題も
冷戦時代さながらに、欧州各所で壁が建設される事態となっているが、多くの問題点が指摘されている。ポーランドはウクライナ難民を歓迎する一方、ベラルーシから不法越境しようとする難民に対しては鉄のフェンスで対応しているのはダブルスタンダードだと批判されている。人権活動家からは、ウクライナ人を助けることでもう一方で起きている人種差別の問題を忘れさせようとしていると厳しい目を向けられている。(FT)
壁やフェンスは森など昔ながらの自然を壊して設置されるため、生態系破壊の懸念も出ている。フィンランドの場合は、国境線の大部分が密林地帯であり、建設費だけでなくパトロールや維持のための人手にもコストがかかるとしている。(ユーロニュース)
障壁を作っても完璧に侵入を防げるわけではないという指摘もある。上を越えたり下を掘ったりすれば通行は可能で、実際にベラルーシの警備隊がはしごを提供したりトンネルを掘ったりして難民の柵越えを助けているという(FT)。さらに、フェンスのない部分からの侵入も可能という指摘がある。リトアニアのシモニーテ首相はフェンスの完成を称えたが、物理的バリアを湖、河川、沼地などすべてに張り巡らすことは技術的に不可能だとしている(BNN)。
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